トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

「——今回はこちらの流れで進行していきます」

大型モニターに企画資料が映し出される

都内テレビ局

黒騎士専用控室の隣にある打ち合わせルーム

俺たちは番組スタッフを囲むように座り、次の大型音楽特番について説明を受けていた

「今回の特番テーマが“国民的アーティストの素顔”ということで」

ディレクターがリモコンを操作する

画面が切り替わる

そこに表示された企画タイトル

『黒騎士は本当に日本中が知っているのか?』

蒼依が吹き出した

「タイトル雑っ!」

「いやでも気になるっすね」

奏が椅子へだらっと寄りかかりながら笑う

優朔は静かに資料をめくっていた

ディレクターが続ける

「今回、皆さんには変装なしで街へ出てもらいます」

「で、一般の方へ街角インタビューをしながら、“どのタイミングで黒騎士だと気づかれるか”を検証する企画です」

「なるほどね」

俺は資料へ目を落とす

かなり大掛かりな企画らしい

撮影場所は都内数カ所

原宿、表参道、お台場、大学周辺

さらに商店街ロケまで組まれていた

「インタビュー内容は基本ラフです」

「“最近ハマってること”とか、“恋愛観”とか、“黒騎士知ってますか?”みたいな感じで自然に会話していただいて」

「途中で気づかれたら、そのリアクション込みで撮影」

「逆に最後まで気づかれなかった場合は、最後に正体を明かしていただきます」

蒼依が笑う

「絶対バレるって」

「いや俺、普通にバレない自信ある」

奏が真顔で言った

その瞬間全員が奏を見る

「……え?」

「お前その髪色で?」

蒼依が即ツッコミを入れる

深緑にメッシュ

ピアス大量

どう考えても一般人オーラは皆無だ

奏は不服そうに眉を寄せる

「え〜でも俺、意外と街歩いてても声かけられないっすよ」

「それ多分“怖くて”だと思う」

優朔が淡々と言う

「ひど」

部屋に笑いが広がる

こういう空気感が、黒騎士らしい

ピリつく現場でも誰かが空気を柔らかくする

その絶妙なバランスで、俺たちはここまで来た

ディレクターが再び口を開く

「あと今回、女性人気だけじゃなく、“世代別認知度”も取りたいので」

「学生、社会人、主婦層、海外観光客など、幅広くインタビューしていただきます」

「なるほど」

「かなりリアルな反応が撮れると思います」

スタッフ陣もどこか気合いが入っている

この番組は大型特番だ

数字も期待されているのだろう

すると別のスタッフが資料を追加で配った

「それから、今回SNS切り抜き用に“恋愛質問コーナー”も強化したいので」

「恋人へ言われたい言葉とか、理想のデートとか、かなり踏み込んで聞きます」

その瞬間蒼依がニヤッと笑ってこっちを見る

「リーダー、ファン死ぬんじゃないすか?」

「なんでだよ」

「いや絶対“紗凪さん”想像しながら答えるじゃないっすか」

奏まで混ざる

俺は思わず苦笑した

「仕事中」

「はいはい」

でも実際、最近は隠すのが難しい

紗凪と一緒に暮らし始めてから、自分でも分かるくらい表情が柔らかくなったらしい

雑誌スタッフにもメイクさんにも

最近めちゃくちゃ機嫌いいですね、と言われる

……まぁ、否定はできない

するとディレクターが真面目な顔へ戻った

「あと一点だけ」

「今回、街中ロケなので」

「盗撮や週刊誌対策で、スタッフはかなり多めにつけます」

その言葉に、空気が少しだけ変わる

やっぱり、その話は避けられない

人気があるということは常に“撮られる側”であるということ

一瞬の表情

一枚の写真

切り取られた言葉

それだけで、簡単に炎上する

俺たちはもう、それを嫌というほど知っていた

優朔が静かに資料を閉じる

「了解です」

短い返事

でも、その声にはどこか緊張感が滲んでいた

すると奏が、空気を変えるみたいに笑う

「ま、楽しそうじゃん」

「街ブラロケとか久々っすよね」

蒼依も頷く

「確かに」

「普通に気楽にやりたいな」

その言葉に、俺も少し笑った





——この時は、まだ誰も知らなかった

この企画で出会う“ある人物”が

後に黒騎士を大きく揺るがす存在になることを