トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

どれくらいそうして泣いていたんだろう

静まり返った部屋に、突然、聞き慣れた着信音が鳴り響いた

びくっと肩を揺らし、胸に抱きしめていたスマートフォンに目を落とす

涙で滲む画面に表示されていたのはずっと待ち焦がれていた【優朔】の文字

しかも、メッセージではなくビデオ通話

「……っ、優朔!」

慌てて涙を拭い、声を整えてから通話ボタンをスライドさせる 

画面が切り替わった瞬間、そこに映し出されたのは、少し息を切らせて、暗い夜道に佇む優朔の姿だった

『あ、梓……っ! 繋がった……!』 

画面の向こうの優朔は、ロケの衣装を着たままで街灯の薄明かりに照らされている

私の顔を見た瞬間、彼はほっとしたように愛おしそうな笑顔を浮かべた

「優朔……! 電波、大丈夫なの……?」

『うんスタッフの人に、ここから少し山を降りたところに、一箇所だけ電波が拾える場所があるって聞いて」

『梓の声が聞きたくて、撮影の休憩中にダッシュで走ってきたんだ』

少し乱れた前髪を無造作に掻き上げながら、はにかむように笑う優朔

トップアイドルが、私のために夜の山道を走ってきてくれた

その事実だけで、胸の奥が熱いものでいっぱいになる

だけど、優朔はすぐに画面の中の私の顔を凝視して、メガネの奥の瞳を心配そうに細めた

『……梓、泣いたの?』

「えっ……あ、ううん! なんでもないよ、ちょっと眠くて……」


『嘘なんでもなくないでしょ? 』

『ごめんね、全然連絡できなくて寂しい思いさせちゃったよね』

画面越しなのに、すべてをお見通しのような優しい声

その温かさに触れた瞬間、さっきまで必死に堪えていた涙が、また堰を切ったように溢れ出してしまった

「ううん、違うの……」

「優朔が頑張ってるの分かってるのに今日、紗凪と陽貴さんがすごく幸せそうにしてるのを見て、羨ましくなっちゃって……会いたいな、って、ワガママ思っちゃったの……」

ポロポロと涙を流しながら本音を 零す私を、 優朔は画面越しにじっと見つめていた

そして、スマートフォンのカメラに近づくようにして、ひどく甘く、切ない声を響かせる

『ワガママなんかじゃないよ』

『僕だって、梓に会いたくて毎日死にそうなんだから』

「優朔……?」

『毎日、梓の写真見てる今日の撮影も、梓に早く格好いい姿を見せたくて死ぬ気で頑張ったんだよ?』

『だから、そんな風に泣かないで今すぐ抱きしめに行けないのが、本当にもどかしい……』

画面の向こうで、優朔が愛おしそうに、まるで私の頬に触れるように画面に指先を近づける

『電波があるうちに、ちゃんと言っておくね梓、大好きだよ誰よりも愛してる』

『だから、寂しくなったら僕の名前を呼んで離れてても、僕の心は全部梓のところにあるから』

「うん…私も…大好きだよ」

涙でボロボロになりながらも、今度は笑顔でそう伝えると、優朔は世界で一番優しい微笑みを返してくれた

離れている距離なんて一瞬で消し去ってしまうほどの、奇跡のような甘い通話

私たちは電波が切れる最後の1秒まで、お互いの「大好き」を何度も何度も確かめ合った