数日後のオフの日
私は久しぶりに紗凪と予定を合わせて少し落ち着いたカフェへランチに来ていた
運ばれてきたパスタを前に、他愛もない世間話をしていた時
紗凪がふとフォークを置いて微笑みながら私を見つめた
「そういえばさ、梓優朔さんのニュース、見たよ」
「えっ……!?」
不意を突かれて、持っていたお冷のグラスを危うく落としそうになる
私の分かりやすい動揺っぷりに、紗凪は「やっぱりね」とニヤニヤしながら小さく笑った
「1ヶ月間、電波も届かないような場所で地方ロケなんでしょ? 超大作の主演だし、世間は大騒ぎだけど……彼女としては、気が気じゃないよね」
私の全てを知っている親友の紗凪にはやっぱり全部お見通しだったみたい
一番大切な親友の前だからこそ、私は張り詰めていた心の仮面を、ふっと外すことができた
「……うん応援したい気持ちは、本当にあるの
彼がずっとやりたかったお仕事だから」
「頑張ってほしいって心から思ってるのに……」
私はフォークをいじりながら胸の奥に溜まっていた黒くて重い本音をポロポロと零し始めた
「でも、1ヶ月も会えないなんて、付き合ってから一度もなくて」
「それに、電波も繋がりにくい場所って聞いたら、声も聞けなくなっちゃうのかなって……急にすごく不安になって」
「こんなこと思うなんて、私、優朔の邪魔をしてるみたいで最低だよね」
情けなくて、俯きそうになる
トップアイドルの恋人になったんだから、これくらいの試練、笑顔で送り出してあげるのが正解なのに
そんな私を、紗凪は遮るように、だけど包み込むような優しい声で呼んだ
「梓」
顔を上げると、紗凪は温かい眼差しで私を見ていた
「邪魔なわけないじゃん大好きな人が1ヶ月も遠くに行くんだから、寂しくて、不安になるのなんて当たり前」
「それを『プロのアイドルの彼女だから』って我慢しなきゃいけないなんてルール、どこにもないよ」
「紗凪……」
「それにね、私は仕事をしてる時の梓も、優朔さんの前での梓も、どっちも一番近くで見てる」
「梓はいつだって一生懸命だし、優朔さんのことを誰より考えてるだから、そんな風に自分を責めないで」
紗凪はそう言って、私の手をテーブル越しにきゅっと握ってくれた
その手の温かさに、胸の奥のツンとした痛みが、少しだけ和らいでいく
私の心にかかっていた暗い雲が、すうっと晴れていくような気がした
やっぱり紗凪は私の最高の親友だ
仕事でもこうしてプライベートでも、いつでも私の心を救ってくれる
「ありがと、紗凪私、優朔のこと待ってるね」
「うん、その意気! もし寂しくて死にそうになったら、いつでも私を呼んで美味しいもの奢ってあげる」
「うん!」
と笑顔で答えながら、私は心の中で、自分の気持ちに素直になる元気をくれた紗凪に、改めて深い感謝と愛おしさを抱いた
私は久しぶりに紗凪と予定を合わせて少し落ち着いたカフェへランチに来ていた
運ばれてきたパスタを前に、他愛もない世間話をしていた時
紗凪がふとフォークを置いて微笑みながら私を見つめた
「そういえばさ、梓優朔さんのニュース、見たよ」
「えっ……!?」
不意を突かれて、持っていたお冷のグラスを危うく落としそうになる
私の分かりやすい動揺っぷりに、紗凪は「やっぱりね」とニヤニヤしながら小さく笑った
「1ヶ月間、電波も届かないような場所で地方ロケなんでしょ? 超大作の主演だし、世間は大騒ぎだけど……彼女としては、気が気じゃないよね」
私の全てを知っている親友の紗凪にはやっぱり全部お見通しだったみたい
一番大切な親友の前だからこそ、私は張り詰めていた心の仮面を、ふっと外すことができた
「……うん応援したい気持ちは、本当にあるの
彼がずっとやりたかったお仕事だから」
「頑張ってほしいって心から思ってるのに……」
私はフォークをいじりながら胸の奥に溜まっていた黒くて重い本音をポロポロと零し始めた
「でも、1ヶ月も会えないなんて、付き合ってから一度もなくて」
「それに、電波も繋がりにくい場所って聞いたら、声も聞けなくなっちゃうのかなって……急にすごく不安になって」
「こんなこと思うなんて、私、優朔の邪魔をしてるみたいで最低だよね」
情けなくて、俯きそうになる
トップアイドルの恋人になったんだから、これくらいの試練、笑顔で送り出してあげるのが正解なのに
そんな私を、紗凪は遮るように、だけど包み込むような優しい声で呼んだ
「梓」
顔を上げると、紗凪は温かい眼差しで私を見ていた
「邪魔なわけないじゃん大好きな人が1ヶ月も遠くに行くんだから、寂しくて、不安になるのなんて当たり前」
「それを『プロのアイドルの彼女だから』って我慢しなきゃいけないなんてルール、どこにもないよ」
「紗凪……」
「それにね、私は仕事をしてる時の梓も、優朔さんの前での梓も、どっちも一番近くで見てる」
「梓はいつだって一生懸命だし、優朔さんのことを誰より考えてるだから、そんな風に自分を責めないで」
紗凪はそう言って、私の手をテーブル越しにきゅっと握ってくれた
その手の温かさに、胸の奥のツンとした痛みが、少しだけ和らいでいく
私の心にかかっていた暗い雲が、すうっと晴れていくような気がした
やっぱり紗凪は私の最高の親友だ
仕事でもこうしてプライベートでも、いつでも私の心を救ってくれる
「ありがと、紗凪私、優朔のこと待ってるね」
「うん、その意気! もし寂しくて死にそうになったら、いつでも私を呼んで美味しいもの奢ってあげる」
「うん!」
と笑顔で答えながら、私は心の中で、自分の気持ちに素直になる元気をくれた紗凪に、改めて深い感謝と愛おしさを抱いた


