梓side
美術館からの帰り道、助手席から見る優朔の横顔はどこかいつもより少しだけ静かだった
怒っているわけではないけれど、時折、赤信号で止まるたびに私の左手をきゅっと強く握りしめてくる
その大きな手のひらから伝わる体温がなんだかいつもより熱くて
私の胸は車のエンジン音よりも大きく高鳴っていた
やがて、見慣れた優朔のマンションの地下駐車場に車が滑り込む
エレベーターを乗り継ぎ、静まり返った彼のリビングに入った瞬間
――カチャリ、と背後でドアの閉まる音が響いた
「ただいま、優朔今日のデート、すごく楽し――」
振り返りながら言葉を紡ごうとした私の身体は、一瞬で優朔の大きな腕の中に閉じ込められていた
「……っ、優朔?」
背中のドアに優しく押し付けられるようにして、すっぽりと抱きすくめられる
バケットハットもメガネも外した優朔の顔が、すぐ目の前にあった
いつもテレビで見せる完璧な笑顔ではなく、どこか切なげで、だけど熱い熱を孕んだ瞳が、真っ直ぐに私を見つめている
「優朔、どうしたの……?」
「……梓が足りない」
耳元で、低く掠れた声が響く
それだけで、私の背中にゾクゾクとした心地いい震えが走った
「美術館で、ずっと我慢してた」
そう言って、優朔は私の首筋に深く顔を埋め、ふわりと彼の香水の匂いが鼻腔をくすぐる
「みんな梓のこと見てた可愛くて、優しくて、自慢の恋人だけど……他の男にジロジロ見られるの、本当に嫌だった」
子供のように少し拗ねた声
だけど、腰を抱きしめる腕の力は強くて、彼がどれだけ本気でヤキモチを妬いていたのかが伝わってきて、胸が苦しいくらいに愛おしくなる
「ごめんね……? 私、全然気づかなくて」
「気づかなくていいよ梓はそのままの優しい梓でいて
……でも、その代わり」
優朔がゆっくりと顔を上げ、至近距離で視線が交差する
彼の綺麗な唇が、意地悪そうに、だけど酷く甘く弧を描いた
「外で我慢した分今からたっぷり、梓を独占させてね」
美術館からの帰り道、助手席から見る優朔の横顔はどこかいつもより少しだけ静かだった
怒っているわけではないけれど、時折、赤信号で止まるたびに私の左手をきゅっと強く握りしめてくる
その大きな手のひらから伝わる体温がなんだかいつもより熱くて
私の胸は車のエンジン音よりも大きく高鳴っていた
やがて、見慣れた優朔のマンションの地下駐車場に車が滑り込む
エレベーターを乗り継ぎ、静まり返った彼のリビングに入った瞬間
――カチャリ、と背後でドアの閉まる音が響いた
「ただいま、優朔今日のデート、すごく楽し――」
振り返りながら言葉を紡ごうとした私の身体は、一瞬で優朔の大きな腕の中に閉じ込められていた
「……っ、優朔?」
背中のドアに優しく押し付けられるようにして、すっぽりと抱きすくめられる
バケットハットもメガネも外した優朔の顔が、すぐ目の前にあった
いつもテレビで見せる完璧な笑顔ではなく、どこか切なげで、だけど熱い熱を孕んだ瞳が、真っ直ぐに私を見つめている
「優朔、どうしたの……?」
「……梓が足りない」
耳元で、低く掠れた声が響く
それだけで、私の背中にゾクゾクとした心地いい震えが走った
「美術館で、ずっと我慢してた」
そう言って、優朔は私の首筋に深く顔を埋め、ふわりと彼の香水の匂いが鼻腔をくすぐる
「みんな梓のこと見てた可愛くて、優しくて、自慢の恋人だけど……他の男にジロジロ見られるの、本当に嫌だった」
子供のように少し拗ねた声
だけど、腰を抱きしめる腕の力は強くて、彼がどれだけ本気でヤキモチを妬いていたのかが伝わってきて、胸が苦しいくらいに愛おしくなる
「ごめんね……? 私、全然気づかなくて」
「気づかなくていいよ梓はそのままの優しい梓でいて
……でも、その代わり」
優朔がゆっくりと顔を上げ、至近距離で視線が交差する
彼の綺麗な唇が、意地悪そうに、だけど酷く甘く弧を描いた
「外で我慢した分今からたっぷり、梓を独占させてね」


