トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

紗凪side

東京ドームでの復活ライブから数日が経ち

私はいつも通り病院で働いていた

ICU急変対応術後管理

変わらない日常を過ごしていた

休憩時間、スタッフステーションへ戻ると

後輩たちがスマホを見ながら盛り上がっている

「一ノ瀬さん!」

声を掛けられる

「見ました!?」

「何を?」

後輩は嬉しそうにスマホを見せてきた

そこには東京ドームのステージに立つ四人の姿

そして大きな見出し



『黒騎士 四人体制で完全復活』



思わず目を細める

何度見ても胸の奥が温かくなる

「本当にすごかったです」

後輩が言う

「私テレビ見ながら泣きました」

周囲の看護師たちも頷いていた

「私も」

「録画消せない」

「奏くん出てきた瞬間やばかった」

そんな会話が聞こえてくる

私は小さく笑った

みんなは知らないあの日の裏側を

あの笑顔の裏にあった苦しさを

どれだけ眠れない夜があったのかを

どれだけ泣いたのかを

どれだけ傷付いたのかを

でも知らなくていいとも思った

だってそれを全部乗り越えた先にあの日の笑顔があったから


休憩室でコーヒーを飲みながらふとテレビを見る

ワイドショーだった

また黒騎士の特集が流れている

東京ドームの映像

歓声



ペンライトの海

そして奏くんが「ただいま」と言った瞬間

何度も流されるその映像

コメンテーターが言う

「芸能史に残るライブでしたね」

「まさに伝説の復活劇です」

「四人が揃った瞬間の歓声は鳥肌が立ちました」

私は静かにテレビを見つめた

伝説

そう呼ばれる日が来るなんて

あの頃は想像もしていなかった

活動休止が決まった日

陽貴くんは私の前で泣かなかった

でも眠れない夜はたくさんあった

夜中に起きてしまう日も

ため息をつく日も

何も食べられない日もあった

奏くんもそうだった

病院で会うたびに少しずつ痩せていった

笑えなくなっていた

あの姿を私は忘れられない

だから東京ドームでスポットライトを浴びながら笑っていた奏くんを見た時

本当に涙が止まらなかった

仕事が終わってロッカー室でスマホを開く

SNSのおすすめ欄

まだ黒騎士ばかりだった

『一生忘れないライブ』

『人生で一番泣いた』

『あの日東京ドームにいられて良かった』

『黒騎士おかえり』

『伝説を見た』

その言葉を読みながら思う

たぶんみんなが見たのは奇跡じゃない

奇跡みたいに見えるくらい彼らが必死に頑張った結果なんだと思う

何度転んでも

何度傷付いても

立ち上がったから

だから今があるのだと思った

病院を出る

冬の空気が少し冷たい

ふと空を見る

あの日と同じように

東京の夜空にはたくさんの星が見えていた

そして自然と笑ってしまう

今頃陽貴くんはまた忙しくしているんだろうな

復活した黒騎士は以前よりもっと忙しくなった

テレビ

雑誌

ラジオ

ライブ

毎日目が回るようなスケジュール

でもそれが嬉しいと皆んなは言う

仕事があること

求められること

ステージに立てること

全部当たり前じゃなかったから

スマホが震えて画面を見る

陽貴くんだった

『今終わった』

短いメッセージ

その後に

『帰る』

たった三文字

それだけなのに自然と笑顔になる

私はすぐ返信する

『お疲れさま』

少し考えて

もう一文付け足した

『おかえり』

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そして思う

東京ドームで五万人が言った言葉

ファンが待ち続けた言葉

家族が待ち続けた言葉

仲間が待ち続けた言葉

おかえり

その一言に全部が詰まっている気がした

そして誰より近くで見てきた私は知っている

あの日の復活ライブはただのライブじゃなかった

それは信じ続けた人たち全員が掴んだ奇跡だった

だからきっと

何年経っても

何十年経っても

私は忘れない

あのクリスマスイブの東京ドームを

四人が並んで笑ったあの瞬間を

そして――

黒騎士が本当の意味で帰ってきた日を