トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

「陽貴くん」

紗凪が俺を呼ぶ

紗凪は少しだけ目を潤ませていた

また泣く気か

そう思って笑う

すると紗凪も笑った

「今日ね」

「うん」

「奏くんが出てきた瞬間」

少し言葉を探す

そして続けた

「鳥肌が止まらなかった」

その顔は本当に嬉しそうだった

俺は思わず笑った

「俺も」

「え?」

「実は俺も」

紗凪が驚く

でも本当だ

ステージ袖で最後のスポットライトが奏を照らした瞬間

俺も鳥肌が立った

何百回もライブをやってきたのに

あんな感覚は初めてだった

会場中の歓声



拍手

全部が奏を迎えていた

あの瞬間だけはきっと一生忘れない

その時だった

「陽貴さん」

呼ばれて振り向く

奏だった

少し照れ臭そうに笑っている

目はまだ赤い

俺は立ち上がる

「どうした」

すると奏は少しだけ俯いた

そして静かに言った

「ありがとうございます」

その一言だった

でも何に対してなのかは分かった

待ったこと

信じたこと

守ったこと

全部だ

俺は少しだけ笑う

そして奏の頭を軽く叩いた

「今さらだろ」

奏が笑う

泣きそうな顔で

でもちゃんと笑う

「はい」

その返事を聞きながら思う

もう大丈夫だ

俺たちはちゃんと戻ってきた

失った時間は戻らない

傷も消えない

でも今日という日は確かにあった

この景色も

この笑顔も

全部本物だ

俺は控え室を見渡す

家族

仲間

恋人

スタッフ

みんな笑っている

そして

心の中で静かに思った

これから先

どんなことがあっても

今日という日を忘れなければ

俺たちはきっと大丈夫だ

東京ドームの歓声はもう聞こえない

でも

胸の奥ではまだ鳴り続けていた

まるで――

「おかえり」

そう言ってくれているみたいに