トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

陽貴side

今日だけで何回泣いたんだろう

何度も胸がいっぱいになった

何度も言葉が詰まった

何度も視界が滲みそうになった

それくらい特別な日だった

控え室の中は相変わらず賑やかだった

蒼依はスタッフから差し入れを見つけて早速食べ始めているし

優朔は梓ちゃんと並んで座りながら静かに話している

奏は両親に囲まれて泣いたり笑ったり忙しい

そんな光景を見ながら俺はソファに腰を下ろした

隣には紗凪がいる

肩が触れるくらい近く

それだけで不思議と落ち着いた

「疲れた?」

紗凪が小さく聞く

俺は天井を見上げながら笑った

「めちゃくちゃ疲れた」

本音だった

身体中が重い

足も痛い

喉もガラガラだ

でもそれが心地いい

生きてるって感じがするから

紗凪が少し笑った

「三時間半だもんね」

「長かったな」

「うん」

騒がしい控え室の中なのに紗凪の隣だけ別の時間が流れているみたいだった

ふと紗凪が小さく呟く

「本当に帰ってきたね」

その言葉に胸が熱くなる

俺は前を見る

奏が笑っている

優朔も笑っている

蒼依も笑っている

そしてみんながそこにいる

「うん」

自然と頷いた

「帰ってきた」

それしか言えなかった

でもそれで十分だった

正直途中で何度も諦めそうになった

活動休止が決まった日

家に帰っても眠れなかった

スマホを見るたびに流れてくるニュース

SNS

心ない言葉

スポンサーへの謝罪

仕事が消えていく現実

何もできない無力感

毎日息が苦しかった

そして奏が壊れていく姿

あれが一番辛かった

病室で

「戻りたい」

そう言いながら泣いた奏

ステージの映像を見ながら泣いていた奏

歌えなくなった奏

あんな姿

二度と見たくなかった

だから

今日

あいつが東京ドームの真ん中で笑っていた

それだけで十分だった

本当に

それだけでよかった