トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

時は流れて――

黒騎士が活動を再開してから、はや4か月

長く苦しかった戦いも、ようやく終わりを迎えようとしていた

東京地方裁判所

俺たちは傍聴席に並んで座っていた

隣には優朔、蒼依、黒瀬さん、社長

そして奏

奏の隣にはご両親の姿もある

法廷内は静まり返っており、緊張で空気が張り詰めている

裁判長が判決文を手に取る

そして静かに口を開いた

「それでは判決を言い渡します」

俺は無意識に拳を握った

長かった

本当に長かった

報道が出た日から

活動休止、会見、奏の入院、訴訟

全部が頭をよぎる

裁判長は判決文を読み上げていく

そして法廷内がさらに静まった

「被告である株式会社スターゲートエンターテインメント及び被告女性による一連の主張については、提出された録音データ、証言、金銭授受記録、関係者証言等に照らし合わせた結果、信用性を認めることはできない」

静かな声が響く

俺たちは固唾を呑んで聞いていた

「また被告女性による被害申告についても客観的証拠との間に重大な矛盾が認められ、事実であると認定することはできない」

傍聴席がわずかにざわつく

奏は動かず、ただ前を見ていた

裁判長は続ける

「さらに提出された録音データ及び関係証拠から、本件は原告である桜庭奏氏の社会的評価を著しく低下させる目的で行われた可能性が極めて高い」

そして裁判長は判決を告げる

「よって被告女性及び被告事務所に対し、連帯して損害賠償金二億三千万円の支払いを命ずる」

静まり返る法廷

「また被告女性及び被告事務所は、全国紙並びに主要インターネット媒体において謝罪広告を掲載すること」

「さらに被告事務所代表者及び関係者については、別途進行中の刑事事件に関する捜査資料を関係機関へ送付するものとする」

その瞬間だった

法廷内が大きくざわついた

記者席も一斉に動く

誰もがメモを取っている

俺は隣を見ると奏はまだ信じられないような顔をしていた

裁判長の声が続く

「原告桜庭奏氏の名誉は著しく毀損され、その精神的苦痛は極めて大きい」

「裁判所は本件について極めて悪質な事案であると判断する」

そして最後に

裁判長は静かに言った

「原告の請求を全面的に認容する」

――全面勝訴

その言葉が法廷に響いた

俺は思わず目を閉じる

肩の力が抜ける

終わった

ようやく

終わった

隣から嗚咽が聞こえる

奏のお母さんだった

涙を流しながら顔を覆っている

お父さんも目を潤ませていた

黒瀬さんは顔を伏せたまま動かない

社長も静かに目を閉じている

そして

奏

奏は前を見たまま固まっていた

数秒

いや

もっと長かったかもしれない

やがて

ぽろりと涙が落ちた

一粒

また一粒

止まらない

「……終わった……」

掠れた声

誰に向けたわけでもない

ただ自然と零れた言葉だった

「終わった……」

その声を聞いた瞬間

俺の胸の奥も熱くなる

優朔が静かに目を伏せる

蒼依は涙を堪えるように天井を見上げていた

二度と取り戻せない時間もある

傷付いた心もある

失った仕事もある

それでも今日

ようやく真実が認められた

奏は静かに泣いていた

まるで長い悪夢から目を覚ましたみたいに

そして俺は思う

ここからだ

本当の意味で

俺たちはやっと前を向ける