「黒騎士の皆さん、間もなくスタンバイお願いします!」
廊下に響くスタッフの鋭い声に促され、俺たちは無言で立ち上がった
冷たいコンクリートの長い廊下を、一歩ずつ踏みしめるように歩いていく
辿り着いたステージ袖
モニターには、今まさにまばゆい光のなかでパフォーマンスを行う前の出演者の姿が映し出されていた
鼓膜を激しく揺らす地鳴りのような歓声、網膜を焦がす鮮烈な照明、重低音が響く音楽
そのすべてが、狂おしいほどに懐かしい
そして、いよいよステージへと足を踏み出すその直前
俺の視線は、自然とフォーメーションの中央付近へと吸い寄せられた
そこは、本来なら奏が立つべき、あいつの絶対的な立ち位置だ
今回の活動再開にあたり、誰もそのことについて口を開かなかった
けれど、最初の打ち合わせの段階で、俺たちの意思は最初から完全に一致していた
あいつの場所は、絶対に詰めない
綺麗な空白のまま、残しておこうと
誰かが提案したわけでも、ルールを決めたわけでもない
ただ、自然とそうなったんだ
フォーメーションの組み方も。激しいダンスの動線も歌い分けるパートの立ち位置も
すべては、奏の場所だけをぽっかりと空けたまま、完成されている
本来なら4人用の緻密な振り付けを、不完全な3人だけで踊る
プロとして、あるいはエンターテインメントの形として、それは歪で不自然なものかもしれない
だけど、今の俺たちにはそれが正解だった
あの場所は、他の誰のものでもない、世界でたった一人の「奏」の特等席だからだ
「本番、5秒前です!」
スタッフのカウントダウンが響き、心臓がドクンと大きく跳ね上がる
一瞬にしてスタジオの全照明が落ち、世界が暗転した
暗闇の向こうから、5万人のドームにも負けない熱い歓声が波のように押し寄せてくる
そして、スピーカーから響く華やかな曲紹介
「お待たせしました! 激動の波を乗り越え、今夜ついに活動再開を果たした『黒騎士』の皆さんです!」
割れんばかりの拍手がスタジオを包む
俺たちは意を決して、光の中へと足を踏み出した
眩しいほどの強烈なライトが、俺たちの全身を容赦なく照らし出す
目の前に広がる、色とりどりのペンライトの海と、割れんばかりの大歓声
一瞬、あまりの光景に息を飲む
何度も何度も見てきたはずの景色
なのに、今日見るこの光景は、今までとは全く違って見えた
やはり俺たちにとって、このステージの上だけは、何にも代えがたい特別な聖域なのだと、魂が理解する
廊下に響くスタッフの鋭い声に促され、俺たちは無言で立ち上がった
冷たいコンクリートの長い廊下を、一歩ずつ踏みしめるように歩いていく
辿り着いたステージ袖
モニターには、今まさにまばゆい光のなかでパフォーマンスを行う前の出演者の姿が映し出されていた
鼓膜を激しく揺らす地鳴りのような歓声、網膜を焦がす鮮烈な照明、重低音が響く音楽
そのすべてが、狂おしいほどに懐かしい
そして、いよいよステージへと足を踏み出すその直前
俺の視線は、自然とフォーメーションの中央付近へと吸い寄せられた
そこは、本来なら奏が立つべき、あいつの絶対的な立ち位置だ
今回の活動再開にあたり、誰もそのことについて口を開かなかった
けれど、最初の打ち合わせの段階で、俺たちの意思は最初から完全に一致していた
あいつの場所は、絶対に詰めない
綺麗な空白のまま、残しておこうと
誰かが提案したわけでも、ルールを決めたわけでもない
ただ、自然とそうなったんだ
フォーメーションの組み方も。激しいダンスの動線も歌い分けるパートの立ち位置も
すべては、奏の場所だけをぽっかりと空けたまま、完成されている
本来なら4人用の緻密な振り付けを、不完全な3人だけで踊る
プロとして、あるいはエンターテインメントの形として、それは歪で不自然なものかもしれない
だけど、今の俺たちにはそれが正解だった
あの場所は、他の誰のものでもない、世界でたった一人の「奏」の特等席だからだ
「本番、5秒前です!」
スタッフのカウントダウンが響き、心臓がドクンと大きく跳ね上がる
一瞬にしてスタジオの全照明が落ち、世界が暗転した
暗闇の向こうから、5万人のドームにも負けない熱い歓声が波のように押し寄せてくる
そして、スピーカーから響く華やかな曲紹介
「お待たせしました! 激動の波を乗り越え、今夜ついに活動再開を果たした『黒騎士』の皆さんです!」
割れんばかりの拍手がスタジオを包む
俺たちは意を決して、光の中へと足を踏み出した
眩しいほどの強烈なライトが、俺たちの全身を容赦なく照らし出す
目の前に広がる、色とりどりのペンライトの海と、割れんばかりの大歓声
一瞬、あまりの光景に息を飲む
何度も何度も見てきたはずの景色
なのに、今日見るこの光景は、今までとは全く違って見えた
やはり俺たちにとって、このステージの上だけは、何にも代えがたい特別な聖域なのだと、魂が理解する


