トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

その温かな空気のまま司会者が再び口を開いた

「実は今日、視聴者の皆さんから本当にたくさんメッセージが届いているんです」

スタッフが数枚の用紙を手渡す

司会者はその中の一枚を見ながら読み始めた

「『黒騎士の皆さん、お帰りなさい今日この日をずっと待っていました』」

客席から拍手が起こる

「『大変な2か月だったと思いますでもまた笑っている姿を見られて嬉しいです』」

蒼依が少し俯く。たぶん泣きそうになっているのだ

俺も胸の奥が熱くなった

司会者はさらに続ける

「『4人の黒騎士が大好きです桜庭さんが帰ってくる日を待っています』」

――4人

その言葉に自然と俺たちは顔を見合わせる

優朔が小さく息を吐く

蒼依は少しだけ目元を擦った

司会者も空気を感じ取ったのか、優しく笑った

「ファンの皆さんも待っているんですね」

俺は頷く

「はい」

それだけしか言えなかった

でもその一言に全部込めたつもりだった

奏が帰ってくること、また4人で並ぶこと

それが俺たちの目標だから

収録はその後も続いた。最近ハマっていること、活動休止中の過ごし方、メンバー同士の話

久しぶりに笑いながら話す時間だった

途中、蒼依が天然発言をしてスタジオ中を笑わせたり

優朔が淡々とツッコミを入れたり

司会者から

「やっぱりこの空気感ですね」

と言われたり。気付けば俺自身も自然に笑っていた

本当に久しぶりだった。こんな風に心から笑えたのは

そして2時間近く続いた収録も終盤

司会者が最後に聞いた

「では最後に黒騎士の皆さん!」

「今応援してくれている皆さんへメッセージをお願いします」

スタジオが静かになる

まず優朔がマイクを取った

「たくさん心配をかけました」

「それでも待っていてくれてありがとうございます」

「少しずつになりますが前に進んでいきます」

続いて蒼依

「俺たち本当に支えられてばっかりでした」

「だから今度は俺たちが皆さんに元気を届けられるよう頑張ります」

客席から拍手が起こる

そして最後に俺へ視線が向いた

マイクを握り、少しだけ考える

たくさん伝えたいことはある

でも今伝えるべきことは一つだった

「この2か月」

静かな声で話し始める

「本当にたくさんの人に支えられました」

客席を見渡す

涙を浮かべている人も、笑っている人もいる

「皆さんのおかげで今日ここに立てています」

そして俺は少し笑った

「黒騎士はまだ途中です」

スタジオが静かになる

「でも必ず前へ進みます」

「だからこれからも見守っていてください」

一瞬の静寂。そして大きな拍手が巻き起こった

収録終了の声がかかる

俺たちは立ち上がる

スタッフたちが拍手を送ってくれ、客席の人たちも手を振ってくれていた

その光景を見ながら俺は改めて思った

あぁ、本当に戻ってきたんだと

でもまだ完全じゃない

奏もいない。裁判も終わっていない

だけど、今日確かに黒騎士はもう一度歩き始めた