第2回会見から1週間ほどが経った頃だった
俺たちは再び事務所へ呼ばれていた
会議室に入るといつもより人が多い
社長、黒瀬さん、法務部、広報、スポンサー担当
テレビ局との窓口担当
長机にはたくさんの資料が並んでいた
自然と緊張する
蒼依も珍しく静かだった
優朔は腕を組んだまま資料へ目を落としている
会議室の空気は張り詰めていた
しばらくして社長が席へ着く
全員の視線が集まった
社長は資料を閉じ、そして静かに口を開いた
「まず報告からだ」
会議室が静まる
「訴訟は順調に進んでいる」
その言葉に自然と背筋が伸びた
社長は続ける
「提出した録音データ」
「証言」
「資金の流れ」
「関係者への聞き取り」
「現在までに確認された証拠は、我々にとって非常に有利な状況だ」
「もちろん裁判そのものはこれからだ」
「判決が出るまでには時間もかかる」
「だが少なくとも」
社長はゆっくり言った
「我々が目指している方向へ確実に進んでいる」
その言葉に会議室の空気が少しだけ緩む
2か月以以上、ずっと出口の見えないトンネルを歩いてきた
だからこそ“進んでいる”その1言が大きかった
社長はさらに続ける
「そしてもう1つ」
ここからが本題なんだろう
全員の表情が引き締まる
社長は1枚の資料を手に取った
「スポンサー各社との協議が終了した」
俺は思わず顔を上げた。蒼依も目を見開く
優朔も真っ直ぐ社長を見ていた
社長は微笑む
「多くの企業が黒騎士への支援継続を決定してくれた」
1瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかった
支援継続、つまり切られなかったということだ
信じてもらえたということだ
蒼依が小さく息を呑む
「……マジですか」
思わず漏れた声
社長は頷いた
「マジだ」
張り詰めていた空気が少し和らぐ
社長は続ける
「テレビ局とも話をした」
今度は広報担当者が資料を配る
そこには番組名が並んでいた
情報番組、音楽番組、バラエティ番組
見慣れた名前ばかりだ
俺たちは思わず顔を見合わせる
「出演オファーが続々と届いている」
胸が高鳴る
本当に。戻れるのか
あの場所へ
そして、社長が真っ直ぐ俺たちを見る
「会社として決断した」
会議室が静まり返る
社長はゆっくりと言った
「黒騎士は活動を再開する」
蒼依が固まり、優朔も珍しく目を伏せた。俺は言葉が出なかった
活動再開
何度夢見ただろう
何度諦めそうになっただろう
それが今現実になろうとしている
しかし、社長はそこで言葉を止めなかった
少し表情を引き締める
「ただし」
会議室の空気が変わる
俺たちは顔を上げた
社長は静かに続ける
「桜庭奏の復帰は別だ」
奏は今も病院にいる
体調は回復してきているが、パニック障害はまだ改善途中だ
薬も飲んでいて、眠っている時間も長い
無理は絶対にさせられない
「今は治療を最優先にする」
社長の声はとても優しかった
まるで親のようだった
「焦らせない」
「急がせない」
「戻る時期も本人が決めればいい」
俺は静かに頷く
それでいい。むしろそうであってほしい
社長はゆっくりと俺たちを見る
「黒騎士は当面の間3人で再始動する」
そして社長は最後にこう言った
「奏が戻ってきた時」
少しだけ目を細める
「その時初めて」
「4人の黒騎士が完成する」
――静寂
誰も喋れなかった
胸がいっぱいだった
活動再開は嬉しい。本当に嬉しい
でも俺たちが待っている未来はそこじゃない
3人で再始動する
だけど目指す場所は最初から1つだ
奏が戻ってくること、4人で並ぶこと
その日のために俺たちは前へ進む
そして奏が帰ってきた時、何も変わらず笑って迎えられる場所を守る
それが今の俺たちの役目だから
俺たちは再び事務所へ呼ばれていた
会議室に入るといつもより人が多い
社長、黒瀬さん、法務部、広報、スポンサー担当
テレビ局との窓口担当
長机にはたくさんの資料が並んでいた
自然と緊張する
蒼依も珍しく静かだった
優朔は腕を組んだまま資料へ目を落としている
会議室の空気は張り詰めていた
しばらくして社長が席へ着く
全員の視線が集まった
社長は資料を閉じ、そして静かに口を開いた
「まず報告からだ」
会議室が静まる
「訴訟は順調に進んでいる」
その言葉に自然と背筋が伸びた
社長は続ける
「提出した録音データ」
「証言」
「資金の流れ」
「関係者への聞き取り」
「現在までに確認された証拠は、我々にとって非常に有利な状況だ」
「もちろん裁判そのものはこれからだ」
「判決が出るまでには時間もかかる」
「だが少なくとも」
社長はゆっくり言った
「我々が目指している方向へ確実に進んでいる」
その言葉に会議室の空気が少しだけ緩む
2か月以以上、ずっと出口の見えないトンネルを歩いてきた
だからこそ“進んでいる”その1言が大きかった
社長はさらに続ける
「そしてもう1つ」
ここからが本題なんだろう
全員の表情が引き締まる
社長は1枚の資料を手に取った
「スポンサー各社との協議が終了した」
俺は思わず顔を上げた。蒼依も目を見開く
優朔も真っ直ぐ社長を見ていた
社長は微笑む
「多くの企業が黒騎士への支援継続を決定してくれた」
1瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかった
支援継続、つまり切られなかったということだ
信じてもらえたということだ
蒼依が小さく息を呑む
「……マジですか」
思わず漏れた声
社長は頷いた
「マジだ」
張り詰めていた空気が少し和らぐ
社長は続ける
「テレビ局とも話をした」
今度は広報担当者が資料を配る
そこには番組名が並んでいた
情報番組、音楽番組、バラエティ番組
見慣れた名前ばかりだ
俺たちは思わず顔を見合わせる
「出演オファーが続々と届いている」
胸が高鳴る
本当に。戻れるのか
あの場所へ
そして、社長が真っ直ぐ俺たちを見る
「会社として決断した」
会議室が静まり返る
社長はゆっくりと言った
「黒騎士は活動を再開する」
蒼依が固まり、優朔も珍しく目を伏せた。俺は言葉が出なかった
活動再開
何度夢見ただろう
何度諦めそうになっただろう
それが今現実になろうとしている
しかし、社長はそこで言葉を止めなかった
少し表情を引き締める
「ただし」
会議室の空気が変わる
俺たちは顔を上げた
社長は静かに続ける
「桜庭奏の復帰は別だ」
奏は今も病院にいる
体調は回復してきているが、パニック障害はまだ改善途中だ
薬も飲んでいて、眠っている時間も長い
無理は絶対にさせられない
「今は治療を最優先にする」
社長の声はとても優しかった
まるで親のようだった
「焦らせない」
「急がせない」
「戻る時期も本人が決めればいい」
俺は静かに頷く
それでいい。むしろそうであってほしい
社長はゆっくりと俺たちを見る
「黒騎士は当面の間3人で再始動する」
そして社長は最後にこう言った
「奏が戻ってきた時」
少しだけ目を細める
「その時初めて」
「4人の黒騎士が完成する」
――静寂
誰も喋れなかった
胸がいっぱいだった
活動再開は嬉しい。本当に嬉しい
でも俺たちが待っている未来はそこじゃない
3人で再始動する
だけど目指す場所は最初から1つだ
奏が戻ってくること、4人で並ぶこと
その日のために俺たちは前へ進む
そして奏が帰ってきた時、何も変わらず笑って迎えられる場所を守る
それが今の俺たちの役目だから


