トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

それから数日後

俺たちは再び事務所へ呼ばれていた

場所は最上階の大会議室

普段は役員会議などでしか使われない部屋だ

重厚な扉を開く

中にはすでに社長黒瀬さん法務部長弁護士チーム

そして広報担当者まで揃っていた

異様な空気だった

誰も雑談をしていない

全員が資料を前に座っている

俺たち三人も席についた

自然と緊張する

何かが動く

そんな予感だけはあった

机の上には分厚いファイル

今まで見てきたどの資料よりも多い

蒼依もさすがに表情が硬い

優朔も腕を組んだまま黙っていた

俺も喉が渇く

静寂

そして社長が口を開いた

「まず」

低く落ち着いた声

会議室の空気がさらに張り詰める

「みんな、本当によく耐えてくれた」

その言葉に誰も返事ができなかった

耐えた

確かにそうだった

二か月

長かった

本当に長かった

社長は続ける

「今日はその報告をするために集まってもらった」

そう言って隣に座る宮城弁護士へ視線を向けた

宮城弁護士が立ち上がる

そして手元の資料を開いた

「結論から申し上げます」

会議室が静まり返る

心臓がうるさい

俺は拳を握った

宮城弁護士は真っ直ぐ俺たちを見た

そして

静かに言った

「証拠が揃いました」

その瞬間時間が止まった気がした

誰も喋らない

喋れない

二か月

ずっと待ち続けた言葉だった

弁護士は説明を続ける

女性とライバル会社幹部との会話記録

複数の録音データ

送金履歴

接触記録

証言

さらに内部告発者以外にも複数の証人が確保できたこと

そしてSNSへ投稿された動画についても

内容の矛盾

虚偽発言

時系列の食い違い

様々な裏付けが取れたという

一つ一つ

淡々と説明されていく

でもその内容は衝撃だった

ここまでここまで周到だったのか

怒りが込み上げる

同時に悔しさも込み上げた

こんな悪意のために奏は壊された

俺たちは苦しめられた

二か月もの時間を奪われた

宮城弁護士は資料を閉じた

そしてはっきりと言った

「法的に見ても十分戦えます」

一呼吸置く

会議室中がその言葉を待っていた

そして

「勝てます」

その瞬間だった

蒼依が顔を覆った

肩が震えている

泣いていた

「……っ」

声にならない

優朔も俯いた

目元を押さえている

俺も視界が滲んだ

二か月

長かった

本当に長かった

何度も諦めそうになった

何度も心が折れそうになった

奏を見ていて

無力感に押し潰されそうになったこともある

それでも

ようやく

ようやくここまで来た

俺は顔を覆った

涙が止まらなかった

社長は静かに俺たちを見ていた

急かさない

何も言わない

ただ見守ってくれていた

しばらくして社長が立ち上がる

その姿に全員が顔を上げた

社長は真っ直ぐ前を見る

そして力強く言った

「さぁ、我々も反撃といきましょうか」

誰も動かなかった

社長は続ける

「第二会見を開き」

「証拠を公表する」

「法的措置も正式に発表する」

静かな声だった

でもそこには絶対的な覚悟があった

「君たちの名誉を取り戻す」

「黒騎士を守る」

そして少しだけ表情を柔らかくした

「桜庭奏を守る」

その言葉を聞いた瞬間

また涙が込み上げた

今度は悔しさじゃない

救われた気持ちだった

ようやく

本当にようやく

終わりの見えない闇に

光が差し込んだ気がした