本当の戦いはここからだった
――あの日、最初の報道が出てから
もうすぐで2ヶ月近くが経とうとしていた、
たった2ヶ月
でも俺たちにとっては何年にも感じるほど長い時間だった
会議室のテレビでは朝の情報番組が流れている
どの局もこの話題を取り上げていた
コメンテーターたちがそれぞれ意見を述べている
「ここまで強い姿勢を見せるということは、それなりの証拠を掴んでいる可能性があります」
「ただし裁判となれば長期化も考えられますね」
「世論も今後大きく変わるかもしれません」
画面の中では冷静に話されている
でも当事者からするとそんな簡単な話じゃない
この2ヶ月で俺たちはたくさんのものを失った
仕事、信用、平穏な日常
そして何より仲間の笑顔
だから正直に言えばまだ喜べなかった
蒼依も同じだったらしい
スマホを見ながらぽつりと言う
「なんか……怖いっすね」
その言葉に俺も頷く
優朔も静かに腕を組んだ
「うん、」
「流れが変わったとしても、また何か出てくるかもしれない」
その言葉に誰も反論できなかった
実際そうだった
ここまでだって何度もひっくり返されてきた
会見をして少し空気が変わったと思ったらあの動画が出た
世論なんて簡単に変わる
だから油断はできない
すると会議室の扉が開いた
黒瀬さんだった
ここ数週間でさらに痩せた気がする
それでも表情は少し明るかった
「みんな来てるな」
そう言って資料を机へ置く
分厚いファイル
何冊もある
「今日からまた忙しくなるぞ」
苦笑しながら言う
「覚悟しとけ」
蒼依が思わず聞いた
「何するんですか?」
黒瀬さんは椅子へ腰掛ける
そしてゆっくり言った
「まずは事実関係の整理だ」
「メディア対応」
「スポンサー対応」
「関係各所への説明」
「それから裁判の準備」
聞いているだけで気が遠くなる
でもどれも必要なことだった
黒瀬さんは続ける
「今までみたいに黙ってるだけじゃない」
「これからは説明する側になる」
その言葉に俺は少しだけ背筋を伸ばした
確かにそうだ
今までは耐えるだけだった
でもこれからは違う
ようやく自分たちの言葉で伝えられる
その時だった
会議室のテレビからアナウンサーの声が聞こえる
『今回の提訴発表を受け、SNS上では様々な反応が広がっています』
画面には投稿が映し出される
『もし本当に冤罪なら怖すぎる』
『黒騎士がんばれ』
『真実が知りたい』
『まだ分からないけど、事務所がここまでやるなら理由があるんだろう』
その文字を見ながら思う
ようやく
ようやくだ
この2ヶ月
何度も心が折れそうになった
信じてくれる人が減っていくのを見るのも
仲間が苦しむ姿を見るのも
本当に辛かった
だからこそ今また耳を傾けようとしてくれる人がいることが
信じようとしてくれる人がいることが
何より救いだった
ふとスマホが震える
画面を見る
紗凪からだった
『ニュース見たよ』
短いメッセージ
その後に続く
『後少し、踏ん張って』
俺は返信を打つ
『ありがとう』
送信して
窓の外を見る
長い戦いになるだろう
簡単には終わらない
それでも
2ヶ月前
あの日、全てが崩れ始めた頃とは違う
――あの日、最初の報道が出てから
もうすぐで2ヶ月近くが経とうとしていた、
たった2ヶ月
でも俺たちにとっては何年にも感じるほど長い時間だった
会議室のテレビでは朝の情報番組が流れている
どの局もこの話題を取り上げていた
コメンテーターたちがそれぞれ意見を述べている
「ここまで強い姿勢を見せるということは、それなりの証拠を掴んでいる可能性があります」
「ただし裁判となれば長期化も考えられますね」
「世論も今後大きく変わるかもしれません」
画面の中では冷静に話されている
でも当事者からするとそんな簡単な話じゃない
この2ヶ月で俺たちはたくさんのものを失った
仕事、信用、平穏な日常
そして何より仲間の笑顔
だから正直に言えばまだ喜べなかった
蒼依も同じだったらしい
スマホを見ながらぽつりと言う
「なんか……怖いっすね」
その言葉に俺も頷く
優朔も静かに腕を組んだ
「うん、」
「流れが変わったとしても、また何か出てくるかもしれない」
その言葉に誰も反論できなかった
実際そうだった
ここまでだって何度もひっくり返されてきた
会見をして少し空気が変わったと思ったらあの動画が出た
世論なんて簡単に変わる
だから油断はできない
すると会議室の扉が開いた
黒瀬さんだった
ここ数週間でさらに痩せた気がする
それでも表情は少し明るかった
「みんな来てるな」
そう言って資料を机へ置く
分厚いファイル
何冊もある
「今日からまた忙しくなるぞ」
苦笑しながら言う
「覚悟しとけ」
蒼依が思わず聞いた
「何するんですか?」
黒瀬さんは椅子へ腰掛ける
そしてゆっくり言った
「まずは事実関係の整理だ」
「メディア対応」
「スポンサー対応」
「関係各所への説明」
「それから裁判の準備」
聞いているだけで気が遠くなる
でもどれも必要なことだった
黒瀬さんは続ける
「今までみたいに黙ってるだけじゃない」
「これからは説明する側になる」
その言葉に俺は少しだけ背筋を伸ばした
確かにそうだ
今までは耐えるだけだった
でもこれからは違う
ようやく自分たちの言葉で伝えられる
その時だった
会議室のテレビからアナウンサーの声が聞こえる
『今回の提訴発表を受け、SNS上では様々な反応が広がっています』
画面には投稿が映し出される
『もし本当に冤罪なら怖すぎる』
『黒騎士がんばれ』
『真実が知りたい』
『まだ分からないけど、事務所がここまでやるなら理由があるんだろう』
その文字を見ながら思う
ようやく
ようやくだ
この2ヶ月
何度も心が折れそうになった
信じてくれる人が減っていくのを見るのも
仲間が苦しむ姿を見るのも
本当に辛かった
だからこそ今また耳を傾けようとしてくれる人がいることが
信じようとしてくれる人がいることが
何より救いだった
ふとスマホが震える
画面を見る
紗凪からだった
『ニュース見たよ』
短いメッセージ
その後に続く
『後少し、踏ん張って』
俺は返信を打つ
『ありがとう』
送信して
窓の外を見る
長い戦いになるだろう
簡単には終わらない
それでも
2ヶ月前
あの日、全てが崩れ始めた頃とは違う


