トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

陽貴side

あの日から一週間と少しが経った

長かった

本当に長かった

奏が倒れ病院へ入院し、毎日お見舞いへ通い事務所と病院を往復する日々

その間も弁護士チームは動き続けていた

社長も、黒瀬さんも、法務部も

誰一人休まず証拠を集め続けていた

でも俺たちに入ってくる情報は少なかった

「まだ動かない方がいい」

「今は待ってくれ」

そう言われ続けていたからだ

もちろん理解はしている

中途半端に動けば相手に逃げられる可能性もある

だから耐えた

ただひたすら待った

そしてその日午前十時

俺と優朔と蒼依は事務所へ呼び出されていた

社長から直接だった

珍しい

いや正直に言えば初めてかもしれない

こんな形で呼ばれるのは

会議室へ入る

そこにはすでに社長と黒瀬さん

そして法務部の人たち

数名の弁護士が座っていた

空気が違う

今までとは明らかに

何かが動く

そんな予感がした

俺たちは席へ座る

蒼依も緊張している

優朔も表情が硬い

そして社長が口を開いた

「待たせたね」

低く落ち着いた声

俺たちは自然と背筋を伸ばした

社長は俺たち一人一人を見る

そして静かに言った

「準備が整った」

一瞬

誰も言葉を発さなかった

準備

その言葉の意味を理解するまで少し時間がかかった

でも次の瞬間

心臓が大きく跳ねる

社長は続けた

「反撃を始めるよ」

その言葉に会議室の空気が変わった

黒瀬さんが資料を机へ並べる

分厚いファイル

録音データ

書類

証拠写真

見ただけで相当な量だった

「例の女性の音声データ」

黒瀬さんが言う

「ライバル会社幹部との会話」

「金銭授受に関する証言」

「社員からの内部告発」

次々と資料が並ぶ

俺たちは息を呑んだ

ここまで集めていたのか

社長が頷く

「さらに」

法務部の責任者が口を開いた

「証言者は一人ではありません」

俺たちは顔を上げる

「複数の社員から同様の証言を確保しました」

蒼依が思わず声を漏らした

「……マジかよ」

無理もない

あの日、あの女性が来てくれた時、もちろん希望は見えた

でも正直そこからここまで進むとは思っていなかった

社長は静かに続ける

「今回の件は」

「単なるスキャンダルではない」

「明確な悪意を持った企業犯罪だ」

その声は静かだった

でも怒りが滲んでいた

初めて見る社長の顔だった

「だから徹底的にやる」

会議室が静まり返る

社長は真っ直ぐ俺たちを見る

「君たちは何も悪くない」

「特に桜庭奏は被害者だ」

強い言葉だった

その言葉をどれだけ待っていたか分からない

社長は続ける

「君たちの名誉を取り戻す」

「黒騎士を守る」

「そして桜庭奏を守る」

一つ一つ

噛み締めるように言った

俺は拳を握る

優朔も

蒼依も

同じだった

あの日からずっと

悔しかった

何もできない自分が

奏が壊れていく姿を見ているしかなかった自分が

悔しくて仕方なかった

でも

ようやく

本当にようやく

前へ進める

社長が立ち上がる

そして俺たちへ言った

「ここから先は会社が戦う」

「だから君たちは胸を張りなさい」

「君たちは被害者だ」

その瞬間胸の奥で何かが弾けた

長かった

本当に長かった

でも

ようやく始まる

俺は心の中で奏を思い浮かべた

病院で頑張っている奏を

もう少しだ

絶対に

絶対に取り戻す

お前の笑顔も

お前の居場所も

全部