「紗凪! 輸血ルート確認お願い!」
「了解!」
梓の鋭い声に弾かれるようにして、私はすぐに動き出した
今は余計なことを考える時間なんて一秒たりともない
陽貴くんのことも、奏くんのことも、すべて一旦頭の隅へ追いやる。
今の私にできることはただ一つ、この患者さんを救うこと
それだけだった
「輸血開始します! ルート開通!」
私の報告と同時に、処置室の中の空気がさらに一段と引き締まる
梓はモニターの数値を凝視しながら、次々とスタッフへ指示を飛ばしていく
「血圧72から78、少し上がった! でもまだ油断しないで」
「外科の先生、まだですか!?」
「今エレベーター乗りました!」
怒号のようなやり取りが飛び交う中、私は患者さんの頭側に回り、気道を確保しながらその冷たくなりかけた手を握り続けた
心電図の警告音が絶え間なく響く
でも、誰も視線を逸らさない
フライトも、ERも、結局やることは同じだ
目の前の命を救うこと
そのために、全員が今持っているすべての力と技術を注ぎ込む
「紗凪、そのまま頭側キープ! 外科の先生来たらオペ室へ直行するよ!」
「了解」
梓と視線が合う。マスク越しでも分かる、親友の、そして一人のプロフェッショナルとしての強い瞳
その眼差しに背中を押されるように、私も深く息を吸い込んだ
「状況は!?」
扉が勢いよく開き、ガウンを着た外科の医師たちが雪崩れ込んでくる
「四十代男性、腹腔内出血! 輸血二単位目投与中です!」
梓が淀みなく状況を申し送る
「よし、このまま手術室へ運ぶぞ! ストレッチャー移動!」
全員の手が一斉に動いた
点滴のライン、モニターのコードを絡まないように捌きながら、ストレッチャーを手術室へと滑り込ませていく
自動扉が閉まり、激しい足音が遠ざかっていく
「……はぁ」
静まり返った初療室で、私と梓は同時に大きく息を吐き出した
手袋を外すと、手のひらは冷たい汗でびっしりと濡れていた
「お疲れ、紗凪。最高のハンドオーバーだった。ヘリの中での処置がなかったら、ここまで持たなかったよ」
梓がスクラブの袖で額の汗を拭いながら、いつもの優しい笑顔を向けてくれる
「梓もお疲れ様。本当に、ERの梓は格好いいね」
「もう、やめてよ。必死だったんだから」
そう言って笑い合う
張り詰めていた戦場から、ようやくいつもの日常が戻ってきた気がした
まだ何も終わっていないけれど、私たちは今日も一つの命を繋ぎ止めることができた
その充実感が、心地よい疲労感とともに身体に染み渡っていく
私はフライトスーツのジッパーを少し緩め、窓の外を見上げた
眩しいほどの晴天が東京の街を照らす
それぞれの場所で、みんなが必死に戦っている。だから私も、自分の場所でこれからも頑張ろう
そう強く思いながら、私は片付けを始めるために再び歩き出した
「了解!」
梓の鋭い声に弾かれるようにして、私はすぐに動き出した
今は余計なことを考える時間なんて一秒たりともない
陽貴くんのことも、奏くんのことも、すべて一旦頭の隅へ追いやる。
今の私にできることはただ一つ、この患者さんを救うこと
それだけだった
「輸血開始します! ルート開通!」
私の報告と同時に、処置室の中の空気がさらに一段と引き締まる
梓はモニターの数値を凝視しながら、次々とスタッフへ指示を飛ばしていく
「血圧72から78、少し上がった! でもまだ油断しないで」
「外科の先生、まだですか!?」
「今エレベーター乗りました!」
怒号のようなやり取りが飛び交う中、私は患者さんの頭側に回り、気道を確保しながらその冷たくなりかけた手を握り続けた
心電図の警告音が絶え間なく響く
でも、誰も視線を逸らさない
フライトも、ERも、結局やることは同じだ
目の前の命を救うこと
そのために、全員が今持っているすべての力と技術を注ぎ込む
「紗凪、そのまま頭側キープ! 外科の先生来たらオペ室へ直行するよ!」
「了解」
梓と視線が合う。マスク越しでも分かる、親友の、そして一人のプロフェッショナルとしての強い瞳
その眼差しに背中を押されるように、私も深く息を吸い込んだ
「状況は!?」
扉が勢いよく開き、ガウンを着た外科の医師たちが雪崩れ込んでくる
「四十代男性、腹腔内出血! 輸血二単位目投与中です!」
梓が淀みなく状況を申し送る
「よし、このまま手術室へ運ぶぞ! ストレッチャー移動!」
全員の手が一斉に動いた
点滴のライン、モニターのコードを絡まないように捌きながら、ストレッチャーを手術室へと滑り込ませていく
自動扉が閉まり、激しい足音が遠ざかっていく
「……はぁ」
静まり返った初療室で、私と梓は同時に大きく息を吐き出した
手袋を外すと、手のひらは冷たい汗でびっしりと濡れていた
「お疲れ、紗凪。最高のハンドオーバーだった。ヘリの中での処置がなかったら、ここまで持たなかったよ」
梓がスクラブの袖で額の汗を拭いながら、いつもの優しい笑顔を向けてくれる
「梓もお疲れ様。本当に、ERの梓は格好いいね」
「もう、やめてよ。必死だったんだから」
そう言って笑い合う
張り詰めていた戦場から、ようやくいつもの日常が戻ってきた気がした
まだ何も終わっていないけれど、私たちは今日も一つの命を繋ぎ止めることができた
その充実感が、心地よい疲労感とともに身体に染み渡っていく
私はフライトスーツのジッパーを少し緩め、窓の外を見上げた
眩しいほどの晴天が東京の街を照らす
それぞれの場所で、みんなが必死に戦っている。だから私も、自分の場所でこれからも頑張ろう
そう強く思いながら、私は片付けを始めるために再び歩き出した


