奏は、自分の両手を見つめていた
透明な点滴の針が痛々しく刺さった腕。ストレスのせいで、以前より少しだけ細くなってしまった指先
そして、ぽつりと、心の底の澱を吐き出すように呟いた
「俺……」
震える声が、静かな部屋に響く
「……もう、無理かと思ってた」
そのあまりにも生々しい本音に、胸の奥が、雑に雑巾を絞られるみたいに痛烈に締め付けられた
奏は、不意に顔を上げて笑ってみせた
笑っているのに
——その綺麗な瞳には、見る間に大粒の涙が溢れそうに浮かんでいた
「『みんなお前を信じてる』って言われても……みんなが必死に会見してくれても、実家の家族が味方でいてくれても……」
そこで、言葉が一度きつく詰まる
「……やっぱ、死ぬほど怖かったんですよね」
静かな、悲痛な声だった
「このまま裁判に負けて……一生、身に覚えのない罪のせいで、犯罪者扱いされたまま生きていくのかなって。そう思ったら、夜も眠れなくて……」
一粒の涙が、奏の頬を伝ってシーツへと零れ落ちた
それを合図にするように、また一粒、また一粒と、大粒の涙が連続して落ちていく
「どれだけ『僕はやってない』って、違うって叫んでも……世界中の誰も信じてくれなかったらどうしようって……っ」
病室に、ふたたび重い沈黙が落ちる
俺たちは、誰も言葉を返すことができなかった
だって、それこそが、奏がこの一週間ずっと一人で抱え込み、押し潰されそうになっていた本物の恐怖であり、不安そのものだったからだ
誰にも言えなかった暗闇の叫びを、今、この希望の光に触れて、ようやく外に吐き出すことができたんだと思う
奏は、何度も何度も手の甲で涙を拭った
けれど、堰を切ったように次から次へと溢れてくる涙は、一向に止まる気配がない
「ごめん……なさい」
子供のように小さく、奏は声を震わせた
「なんか……本当に安心したら、涙が勝手に……」
そこで、完全に言葉が途切れて、奏は顔を覆った
その瞬間、優朔がすっと椅子から立ち上がった
そして、何も言わずに奏の元へ歩み寄ると、奏の少し乱れた頭を、手のひらでぽんぽんと軽く撫でた
まるで、泣きじゃくる幼い弟を優しくあやすみたいに、不器用だけど、最大限の温かさを込めて
奏は、優朔の手のひらの下で、さらに深く俯いた
透明な点滴の針が痛々しく刺さった腕。ストレスのせいで、以前より少しだけ細くなってしまった指先
そして、ぽつりと、心の底の澱を吐き出すように呟いた
「俺……」
震える声が、静かな部屋に響く
「……もう、無理かと思ってた」
そのあまりにも生々しい本音に、胸の奥が、雑に雑巾を絞られるみたいに痛烈に締め付けられた
奏は、不意に顔を上げて笑ってみせた
笑っているのに
——その綺麗な瞳には、見る間に大粒の涙が溢れそうに浮かんでいた
「『みんなお前を信じてる』って言われても……みんなが必死に会見してくれても、実家の家族が味方でいてくれても……」
そこで、言葉が一度きつく詰まる
「……やっぱ、死ぬほど怖かったんですよね」
静かな、悲痛な声だった
「このまま裁判に負けて……一生、身に覚えのない罪のせいで、犯罪者扱いされたまま生きていくのかなって。そう思ったら、夜も眠れなくて……」
一粒の涙が、奏の頬を伝ってシーツへと零れ落ちた
それを合図にするように、また一粒、また一粒と、大粒の涙が連続して落ちていく
「どれだけ『僕はやってない』って、違うって叫んでも……世界中の誰も信じてくれなかったらどうしようって……っ」
病室に、ふたたび重い沈黙が落ちる
俺たちは、誰も言葉を返すことができなかった
だって、それこそが、奏がこの一週間ずっと一人で抱え込み、押し潰されそうになっていた本物の恐怖であり、不安そのものだったからだ
誰にも言えなかった暗闇の叫びを、今、この希望の光に触れて、ようやく外に吐き出すことができたんだと思う
奏は、何度も何度も手の甲で涙を拭った
けれど、堰を切ったように次から次へと溢れてくる涙は、一向に止まる気配がない
「ごめん……なさい」
子供のように小さく、奏は声を震わせた
「なんか……本当に安心したら、涙が勝手に……」
そこで、完全に言葉が途切れて、奏は顔を覆った
その瞬間、優朔がすっと椅子から立ち上がった
そして、何も言わずに奏の元へ歩み寄ると、奏の少し乱れた頭を、手のひらでぽんぽんと軽く撫でた
まるで、泣きじゃくる幼い弟を優しくあやすみたいに、不器用だけど、最大限の温かさを込めて
奏は、優朔の手のひらの下で、さらに深く俯いた


