俺たちは思わず息を呑む
社長はゆっくりと部屋へ入ってくる
そして真っ先に見たのは奏だった
泣き腫らした目
やつれた顔
今にも壊れてしまいそうな姿
その姿を見た社長の表情が僅かに曇る
胸が痛んでいるのが伝わってきた
社長は数秒黙ったあと
静かに口を開く
「今回の件は聞いている」
誰も言葉を発さない
社長は続けた
「海外にいたから対応が遅れた」
「本来ならもっと早く日本へ戻る予定だったんだ」
悔しそうな声だった
「でも航空機の都合や契約関係でどうしても動けなかった」
そう言うと
社長はゆっくり俺たちを見る
そして
突然
深く頭を下げた
俺たちは固まった
一瞬何が起きたのか理解できない
「社長!?」
思わず声が出た
優朔も
蒼依も
同時に立ち上がる
「やめてください!」
「頭なんて下げないでください!」
俺たちは慌てて言う
だって頭を下げるべきなのは俺たちじゃないのか
迷惑を掛けているのは俺たちだ
スポンサーにも
事務所にも
会社にも
なのに社長は頭を下げたままだった
「君たちを守るのが遅くなって悪かった」
静かな声
その言葉に誰も何も言えなくなる
社長はようやく顔を上げた
その目は真っ直ぐだった
一切逸れない
逃げない
経営者として
そして
俺たちの親みたいな存在として
真正面から俺たちを見ていた
「陽貴」
名前を呼ばれる
「はい」
「優朔」
「……はい」
「蒼依」
「はい」
そして
最後に
社長は奏を見る
「奏」
奏は俯いたままだった
社長はゆっくり近付く
数歩
その距離まで来て
静かに言った
「顔を上げなさい」
奏の肩が震える
少しずつ顔を上げた
真っ赤な目
涙だらけの顔
社長はそんな奏を見ても一切表情を変えなかった
軽蔑も
失望も
何もなかった
あるのは優しさだけだった
「君は何か悪いことをしたのかい?」
奏が唇を震わせる
「……してません」
掠れた声
「本当に?」
「……してません」
涙が零れる
社長は頷いた
一度だけ
しっかりと
「なら下を向く必要はない」
その言葉に奏の瞳が揺れた
社長は続ける
「世間が何と言おうと」
「ネットが何を書こうと」
「私は君たちを信じている」
部屋が静まり返る
誰も息をしない
それくらい真っ直ぐな言葉だった
「君たちは私が見出した人材だ」
「一緒に夢を追う仲間だ」
「だから」
社長は俺たち四人を見渡した
そして
力強く言った
「何としてでも私は君たちを守る」
その瞬間
胸の奥が熱くなった
社長はさらに続ける
「会社総出で動いている」
「弁護士も増員した」
「調査会社も入れた」
「私はこの件を絶対に終わらせない」
一言一言に力がある
揺るぎがない
「相手が誰であろうと」
「どれだけ時間が掛かろうと」
「真実は必ず明らかにする」
社長の目は真っ直ぐだった
その言葉を聞いて
初めてだった
この騒動が始まってから
初めて
少しだけ
大丈夫かもしれないと思えた
奏の目から再び涙が零れ落ちる
でも
それはさっきまでの絶望の涙じゃなかった
張り詰めていた何かが
少しだけほどけたような
そんな涙だった
社長はゆっくりと部屋へ入ってくる
そして真っ先に見たのは奏だった
泣き腫らした目
やつれた顔
今にも壊れてしまいそうな姿
その姿を見た社長の表情が僅かに曇る
胸が痛んでいるのが伝わってきた
社長は数秒黙ったあと
静かに口を開く
「今回の件は聞いている」
誰も言葉を発さない
社長は続けた
「海外にいたから対応が遅れた」
「本来ならもっと早く日本へ戻る予定だったんだ」
悔しそうな声だった
「でも航空機の都合や契約関係でどうしても動けなかった」
そう言うと
社長はゆっくり俺たちを見る
そして
突然
深く頭を下げた
俺たちは固まった
一瞬何が起きたのか理解できない
「社長!?」
思わず声が出た
優朔も
蒼依も
同時に立ち上がる
「やめてください!」
「頭なんて下げないでください!」
俺たちは慌てて言う
だって頭を下げるべきなのは俺たちじゃないのか
迷惑を掛けているのは俺たちだ
スポンサーにも
事務所にも
会社にも
なのに社長は頭を下げたままだった
「君たちを守るのが遅くなって悪かった」
静かな声
その言葉に誰も何も言えなくなる
社長はようやく顔を上げた
その目は真っ直ぐだった
一切逸れない
逃げない
経営者として
そして
俺たちの親みたいな存在として
真正面から俺たちを見ていた
「陽貴」
名前を呼ばれる
「はい」
「優朔」
「……はい」
「蒼依」
「はい」
そして
最後に
社長は奏を見る
「奏」
奏は俯いたままだった
社長はゆっくり近付く
数歩
その距離まで来て
静かに言った
「顔を上げなさい」
奏の肩が震える
少しずつ顔を上げた
真っ赤な目
涙だらけの顔
社長はそんな奏を見ても一切表情を変えなかった
軽蔑も
失望も
何もなかった
あるのは優しさだけだった
「君は何か悪いことをしたのかい?」
奏が唇を震わせる
「……してません」
掠れた声
「本当に?」
「……してません」
涙が零れる
社長は頷いた
一度だけ
しっかりと
「なら下を向く必要はない」
その言葉に奏の瞳が揺れた
社長は続ける
「世間が何と言おうと」
「ネットが何を書こうと」
「私は君たちを信じている」
部屋が静まり返る
誰も息をしない
それくらい真っ直ぐな言葉だった
「君たちは私が見出した人材だ」
「一緒に夢を追う仲間だ」
「だから」
社長は俺たち四人を見渡した
そして
力強く言った
「何としてでも私は君たちを守る」
その瞬間
胸の奥が熱くなった
社長はさらに続ける
「会社総出で動いている」
「弁護士も増員した」
「調査会社も入れた」
「私はこの件を絶対に終わらせない」
一言一言に力がある
揺るぎがない
「相手が誰であろうと」
「どれだけ時間が掛かろうと」
「真実は必ず明らかにする」
社長の目は真っ直ぐだった
その言葉を聞いて
初めてだった
この騒動が始まってから
初めて
少しだけ
大丈夫かもしれないと思えた
奏の目から再び涙が零れ落ちる
でも
それはさっきまでの絶望の涙じゃなかった
張り詰めていた何かが
少しだけほどけたような
そんな涙だった


