トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

「例の、あの激甘な彼氏さんとは最近どうなのよ?」

「……ちょっと、なんで休憩中に急にそうなるの」

「だってさ、朝の出勤してきた時の紗凪の顔」

「私の、顔……?」

「もうね、完全に“朝からたっぷり愛されてきました”って、顔に書いてあったもん」

「っっっっっっッ!!!!」

あまりに直球すぎる指摘に、喉を通りかけていたコーヒーを本気で吹きそうになる

「ちょ、ちょっと梓! 声が大きいってば……っ!」

「あはは、ほら見なよ、その慌てっぷり。完全に図星じゃん」

「梓っ……!」

私は耳まで一瞬で真っ赤に染め上げながら、恥ずかしさまぎれに彼女をキッと睨みつける

けれど、私のそんな抵抗なんてどこ吹く風で、梓は心底楽しそうに声を立てて笑うだけだった

「いや〜、相変わらずトップアイドル様にそこまで溺愛されてるなんて、本当に羨ましい限りだねぇ」

「違うの、溺愛とかじゃなくて! もう、本当に今朝は聞いてよ……!」

私は悔しさと照れくささから、子供のようにむすっと不満そうに頬を膨らませてみせる

それを見た梓は、からかうのをやめて、ふっとお姉ちゃんのような柔らかく優しい笑みを浮かべた

「でもさ」

「ん?」

「……最近の紗凪、本当に心の底から幸せそうだなって思うよ」

その温かい言葉に、私は不意を突かれて少しだけパチパチと目を瞬かせた

幸せ

……うん。客観的に見ても、主観的に見ても、たぶんすごく幸せだと思う

私は今朝の玄関でのあの温かい抱擁と、優しい彼の体温を思い出し、愛おしさに自然と口元を緩めながら視線を落とした

「……うん。本当に、すごく幸せだよ」

「一緒に住み始めてさ、ちゃんと分かったの」

「なにが?」

「“ただいま”って扉を開ければ、そこに誰かが待っててくれる……帰る場所があるって、こんなに心を芯から安心させてくれるんだなって」

真っ直ぐな私の本音に、梓はどこか救われたような、優しい眼差しで目を細めた

「そっか……。よかったね、紗凪」

短い返事

けれど、その中には親友としての心からの祝福と、包み込むような温かさが確かに詰まっていた

その絶妙なタイミングで、湯気を立てたランチプレートがテーブルへと運ばれてくる

「わあ、美味しそう……!」

「あのさ、病院の食堂レベルのメニューでそこまで純粋にテンション上がれるの、あんたの最大の才能だと思うよ」

「え、何言ってるの。ここのお肉、普通に美味しいじゃん」

「私はもう何年も食べてて完全に飽きました」

「もう、素直じゃないんだから」

お互いに顔を見合わせて、いつものようにどっと笑い合う

そんな穏やかで愛おしい空気の中、私はふと、フォークを動かす梓の横顔を見つめた

「……ねえ、梓」

「ん?」

「梓の方はさ……優朔さんと、その、うまくいってる?」

少しだけ声を潜めて尋ねると、梓はフォークを持ったまま、いつも通りさらっと何事もないように答えた

「ん? うん、普通にうまくいってるよ」

「普通にってなに、もう少し詳しく教えてよ」

「普通に、普通に。めちゃくちゃ仲良いよ」

梓がクスクスと肩を揺らして笑う

けれど、彼女はその後、少しだけ視線を柔らかく落として、どこか照れくさそうに表情を綻ばせた

「……まあ、あの優朔だしね」

「うん」

「見た目はあんなにクールで不愛想じゃん? でもね、思ったよりもずっと甘いし、驚くほどマメなんだよね、あの人」

「うんうん、それで? もっと聞かせて!」

私はお昼ご飯を食べるのも忘れて、思わず身を乗り出して前のめりになる