トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

午前中のICUは、相変わらず息を継ぐ暇もないほどの慌ただしさだった

予定されていたオペ後の入室対応に、一刻を争う人工呼吸器の管理、不意に訪れるシビアな状態変化、そして鳴り止まないナースコール

目の前の命と必死に向き合っているうちに、気づけば壁の時計はとうに正午を回っていた

私はようやく張り詰めていた神経を緩め、溜まっていた電子カルテの入力を終えたところで、凝り固まった身体をほぐすように小さく伸びをした

その時だった

「紗凪〜」

パーテーションの向こうから、聞き慣れた心地いい声が届く

「お昼、一緒に行こ」

見れば、梓がER(救急外来)での激務の合間を縫って、こちらへ上がってきていた

「え、梓もう休憩のタイミング? お疲れ様」

「うん、そろそろ滑り込まないと食堂もカフェも一気に混み合っちゃうから」

「確かに。わかった、すぐ行くね」

私は身につけていたPHSを手際よくフックから外し、デスクに立ち上がる

そのまま二人で肩を並べ、どこか戦友のような空気感でエレベーターへと向かった

梓は歩きながら、首元に張り付いた髪を片手で器用にまとめ直し、深くため息を吐き出した

「もう、今日のERは朝から本当にやばいよ……」

「救急車の受け入れ、そんなに多いの?」

「うん、朝一番のホットコールからずっとフル回転状態。ベッドが全然空かないんだよね」

「うわぁ……それは本当にお疲れ様……」

そんな医療従事者ならではのディープな会話を交わしながら、私たちは院内の一角にあるお洒落なカフェへと足を踏み入れた

幸い、一般のランチタイムのピークより少しだけ早いおかげで、店内は比較的ゆったりとした静寂が保たれている

私たちは日差しの差し込む窓際の特等席へと腰を下ろし、それぞれ彩り豊かなランチプレートを注文した

「なんかさ、こうやって何に追われるでもなく普通に顔を見て話すの、ちょっと久しぶりだね」

私がグラスの水を口に含みながらそう溢すと、梓がふっと目元を緩めて笑った

「確かにね。お互いに夜勤やらフライトの待機やらで、シフトが面白いほどすれ違ってたもんねぇ」

ふと窓の外に目を向けると、広大な青空の向こうに、私たちがいつも命を託しているドクターヘリの白い機体が小さく見えた

その見慣れた景色に、少しだけ戦場にいる時のような懐かしさを覚えながら、私はセットの温かいコーヒーへと口をつけた 

すると

「……で?」

梓が急に、悪戯が成功した子供のようにニヤッと口元を歪めた

瞬時に、私の本能が嫌な予感を察知してアラートを鳴らす