嫌な予感しかしなかった
優朔はすぐに奏へ電話をかける
「スピーカーにしてくれ」
黒瀬さんの言葉に優朔は頷き、スピーカーへと変える
呼び出し音が鳴る
一回
二回
三回
長く感じる
そして
『……もしもし』
聞こえてきたのは奏じゃなかった
若い男の声
俺はすぐに気付く
「音くんか?」
その瞬間
電話の向こうで息を呑む音がした
『陽貴さん……?』
「うん」
『奏の弟の桜庭音です』
妙に丁寧な自己紹介だった
でも
その声は震えていた
泣いている
「音くん」
俺はできるだけ落ち着いた声を出す
「奏は?」
その瞬間だった
ガシャン!!
何かが倒れる音
続いて
聞きたくなかった声が響いた
『離せよ!!』
奏だった
『離せって言ってんだろ!!』
怒鳴り声
聞いたことがないくらい荒れている
俺たちは固まる
さらに
『やめなさい奏!!』
お母さんの泣きそうな声
『落ち着け!!』
お父さんの声
ドン!!
また何かがぶつかる音
『全部俺のせいだろ!!』
『俺がいなきゃよかったんだろ!!』
『もう無理だよ!!』
『無理なんだよ!!』
その叫びに
蒼依が顔を歪めた
優朔は拳を握り締めている
音くんの声が震える
『兄ちゃん今やばくて……』
後ろではまだ物音が続いている
『兄ちゃん!!』
『やめて!!』
音くんが叫ぶ
その声の向こうでお母さんの泣く声が聞こえた
『奏お願いだから……』
『お願いだから落ち着いて……』
胸が苦しくなる
遅かった
俺はそう悟った
動画を見てしまったんだ
やっと少し回復してきていた心が
また壊された
「……遅かったか」
隣で優朔が呟く
掠れた声だった
その時
電話の向こうから嗚咽が聞こえた
音くんだった
『お願いです……』
声が震える
『兄ちゃん止めてください……』
『助けてください……』
その言葉に
部屋の空気が凍った
音くんもまだ高校生だ
兄が苦しんでいる姿を目の前で見て
どうしていいか分からないんだろう
『兄ちゃん……』
『やっと普通になってきたのに…やっと笑えてきたのに…』
『さっき動画見てから……』
『またおかしくなっちゃって』
『ずっと泣き続けてて』
言葉にならなくなる
泣き声だけが聞こえる
『お願いです……』
『兄ちゃん助けてください……』
その言葉が
胸に突き刺さった
俺たちは仲間だ
家族みたいなもんだ
音くんは兄が壊れていくのを見ていることしかできない
そんな無力感の中で必死に俺たちへ助けを求めている
俺は唇を噛み締めた
そして
隣にいる優朔と蒼依を見る
2人も同じだった
表情は青ざめている
でもその目だけは死んでいなかった
俺は静かに口を開いた
「音くん」
『……はい』
「今から俺たち行く」
その瞬間
電話の向こうで息を呑む音がした
「絶対一人にしない」
「奏も」
「音くんも」
「待ってて」
その言葉を聞いた瞬間
電話の向こうから小さな嗚咽が漏れた
『……はい』
『待ってます』
その声は
少しだけ安心したように聞こえた
優朔はすぐに奏へ電話をかける
「スピーカーにしてくれ」
黒瀬さんの言葉に優朔は頷き、スピーカーへと変える
呼び出し音が鳴る
一回
二回
三回
長く感じる
そして
『……もしもし』
聞こえてきたのは奏じゃなかった
若い男の声
俺はすぐに気付く
「音くんか?」
その瞬間
電話の向こうで息を呑む音がした
『陽貴さん……?』
「うん」
『奏の弟の桜庭音です』
妙に丁寧な自己紹介だった
でも
その声は震えていた
泣いている
「音くん」
俺はできるだけ落ち着いた声を出す
「奏は?」
その瞬間だった
ガシャン!!
何かが倒れる音
続いて
聞きたくなかった声が響いた
『離せよ!!』
奏だった
『離せって言ってんだろ!!』
怒鳴り声
聞いたことがないくらい荒れている
俺たちは固まる
さらに
『やめなさい奏!!』
お母さんの泣きそうな声
『落ち着け!!』
お父さんの声
ドン!!
また何かがぶつかる音
『全部俺のせいだろ!!』
『俺がいなきゃよかったんだろ!!』
『もう無理だよ!!』
『無理なんだよ!!』
その叫びに
蒼依が顔を歪めた
優朔は拳を握り締めている
音くんの声が震える
『兄ちゃん今やばくて……』
後ろではまだ物音が続いている
『兄ちゃん!!』
『やめて!!』
音くんが叫ぶ
その声の向こうでお母さんの泣く声が聞こえた
『奏お願いだから……』
『お願いだから落ち着いて……』
胸が苦しくなる
遅かった
俺はそう悟った
動画を見てしまったんだ
やっと少し回復してきていた心が
また壊された
「……遅かったか」
隣で優朔が呟く
掠れた声だった
その時
電話の向こうから嗚咽が聞こえた
音くんだった
『お願いです……』
声が震える
『兄ちゃん止めてください……』
『助けてください……』
その言葉に
部屋の空気が凍った
音くんもまだ高校生だ
兄が苦しんでいる姿を目の前で見て
どうしていいか分からないんだろう
『兄ちゃん……』
『やっと普通になってきたのに…やっと笑えてきたのに…』
『さっき動画見てから……』
『またおかしくなっちゃって』
『ずっと泣き続けてて』
言葉にならなくなる
泣き声だけが聞こえる
『お願いです……』
『兄ちゃん助けてください……』
その言葉が
胸に突き刺さった
俺たちは仲間だ
家族みたいなもんだ
音くんは兄が壊れていくのを見ていることしかできない
そんな無力感の中で必死に俺たちへ助けを求めている
俺は唇を噛み締めた
そして
隣にいる優朔と蒼依を見る
2人も同じだった
表情は青ざめている
でもその目だけは死んでいなかった
俺は静かに口を開いた
「音くん」
『……はい』
「今から俺たち行く」
その瞬間
電話の向こうで息を呑む音がした
「絶対一人にしない」
「奏も」
「音くんも」
「待ってて」
その言葉を聞いた瞬間
電話の向こうから小さな嗚咽が漏れた
『……はい』
『待ってます』
その声は
少しだけ安心したように聞こえた


