桜花転生奇譚

「……神域では、前世でしか見れなかった星座が見れるから好きなんだよね。もちろん、この世界の夜空も好きだけど」

そう言って、夜空を見上げるひかりちゃんの横顔は、少し寂しそうに見えた。



その日から数日後、今日も日勤で、私は朝から伊織さんとみどりさんと稽古をしていた。ひかりちゃんと玲さんと蒼さんは、朝から町に行っている。

今日は朝からどんよりとした雲が広がっていて、いつ雨が降り出してもおかしくない状態だ。

「お兄ちゃん、傘持っていったかな。傘持っていくように声かけたのに、びしょ濡れで帰ってきたことがあったからな……」

みどりさんの言葉に、伊織さんは苦笑する。

傘を持たずに出かけた蒼さんが、大雨の中びしょ濡れになって帰ってきたことがあった。それが、約1か月前の話だ。

あの日のことを、みどりさんと伊織さんが話をしていると、勢いよく道場の扉が開く音がする。

そのことに小さく悲鳴を上げながら音がした方を見てみれば、そこには蒼さんがいた。

「お兄ちゃん?」

みどりさんが蒼さんに近づく。伊織さんも蒼さんに近づいたから、私も蒼さんの近くまで歩いた。

蒼さんの服はドロドロに汚れていて、掠り傷が出来ている。

「……玲が、ひーちゃんが、怪異に呑み込まれた」

蒼さんの言葉に、私たちは何も言うことが出来なかった。