桜花転生奇譚

そして、腰には、金具以外が白色の、装飾品の付いた刀が差さっている。

この世界は、許可証を持つ一部の者しか帯刀は出来ない。羽織に描かれた紋章から見るに、彼女は祓魔師隊の子なのだろう。

祓魔師は、大江戸でも限られた者しか見ることが出来ないという怪異から人々を守ってくれているという。

大江戸の人々は、怪異の存在を信じている。枝垂れ桜も、魔除けとしてたくさん植えられているらしい。

「……あの子、祓魔師隊の……」

「桜散る夜の君を思えば幾度と願う待ちわびる巡り詩(うた)」

女性の口から出たのは、都々逸だった。言葉の綺麗さに、私は思わず「すごい……」と呟いてしまう。

「……」

その時だった。私の目の前に、黒い渦?のようなものが現れた。突然のことに、ひっ、と小さな悲鳴が口から漏れてしまう。

黒い渦は、モヤ?のようなものを引き寄せて徐々に何かを形作る。

そこから生まれたのは、黒い狼のような怪物だった。瞳孔のない赤い目が、鋭く私を見る。

恐怖のあまり、私は悲鳴を上げることも体を動かすことも出来ない。ただ、その場で震えていることしか出来なかった。

……私、死ぬのかな……誰か、助けて……。

「……」

グルル、と狼?が唸ると同時に、私と狼?の間に私に背を向けた誰かが現れる。白い羽織がふわりと揺れた。

……さっき、都々逸を口にしてた子だ……。