――夜、野……。
久々に見た彼女の字と名前。
手紙を額にあて、そっと息を吐く。
夢じゃない。ほんとうに、夜野から送られたものだ。
誰が通るかわからない下駄箱にいるというのに、この場に泣き崩れてしまいそうだった。
今すぐにでもCDになにが焼かれているか知りたかったけれど、夜野がどうしてもってときにと念を押しているから、勉強を終え寝る前に再生した。
CDに収録されていたのは一曲だけだった。
『欠けた月』
なぜこの曲を選択したのか。相変わらず彼女の意図を正確に読み取るのは難しい。難しいけれど、頭で理解するよりも先に、するりと心に入ってきて。気づいたときには泣いていた。
この曲が投稿されたのは、俺がステラのファンであると本人に明かした日の晩。
あの頃はただ純粋にステラの曲に焦がれていた。
でも今は違う。
あの日から始まった夜野との日々がエンドロールのように流れてくる。
俺は夜野を思い浮かべずにステラの曲を聴くことができなくなってしまった。彼女はそれを危惧していたというのに。
切実に元の俺に戻りたいと思った。でももう戻れない。夜野の望む俺にはなれない。
夜野のことを、好きになってしまったから。



