星屑の唄【期間限定公開】

 彼女の持つ感覚は、俺には想像もつかないほど、複雑で繊細なものだろうから。

 下手に触れずに、俺が勝手に好きでいればいい。

 今抱えている問題が解決したあとでもこんなふうに、ただそばにいられたら。

 そんなあわい願望が打ち砕かれたのは、そのすぐあとだった。


 頭を悩ませて考えに考えた末決めた、あの曲のタイトルを彼女に伝えようとした日、スピカが花火大会に行くとXに投稿した。

 焦るあまりまともな調査もせずに呼びだした俺を責めるでもなく、夜野は「どうせ来たんなら満喫しよ」となんてことないように笑った。彼女のこういう軽さにたびたび救われている。

 満開に咲く花火をきちんと見たのはいつぶりだったか。覚えていないけれど、咲いては散っていく姿が、彼女から溢れる音たちに似ている気がした。

 ふいにあの曲のタイトルが思い浮かんだ。


『未完の星』


 彼女を蝕む激情から逃れるように歌い、俺を魅了したあの曲は、さらなる高みを渇望しているようにも感じたからこう名づけた。夜野はこのタイトルをどう思うだろうか。

 花火が終わり、夜野にタイトルを伝えようとしたとき、スマートフォンが震えた。スピカがXに投稿したのだ。目の前が真っ暗になった。なんで、なんで今なんだよ。

 見て見ぬふりをしてやりたかったが、奴の素顔を特定するのは彼女の本懐。

 すぐに情報を共有し、スピカを見つけた瞬間芽生えたのは、明確な殺意だった。視界が危険を知らせるような赤色に染まっていく。