星屑の唄【期間限定公開】

 これは夜野には内緒の俺の話。


      ☽


 夜野心星。

 彼女の存在を知ったのは高校に入学して半年経ったか経たなかったくらいの頃だったと思う。

 ふつうに学校で生活していれば、漫画みたいにテストの順位が掲示されなくても、どこからか情報が漏れて、同じ学年で頭いい人の名前くらいはなんとなく知るようになる。夜野はその筆頭だった。

 とはいえ名前くらいしか知らなかったし、どんな顔でどんな性格かなんて興味なかった。


 転機が訪れたのは、たまたま廊下ですれ違ったとき。

 声が、ステラに似ていたのだ。

 思わず振り返ったが、友だちと歩く後ろ姿しか掴めず、呆然と立ち尽くす俺だけが取り残された。

 そしてそんな俺を見かねた友だちがあれが例の夜野心星だと教えてくれた。

 夜の美しさを体現したような名前を、飴玉でも舐めるみたいに心の中でころころと転がして吞み込む。

 そういえば「ステラ」は日本語では星を意味する。

 じゃあ、もしかして本当に――。いやそんなはずないと思いつつも、一度芽生えた期待を積むことができなかった。


 それから俺は密かに彼女を目で追うようになった。

 俺が意識したからかもしれないけれど、彼女とはよく廊下ですれ違う。たぶん、移動教室のタイミングが同じなんだと思う。