私には、絶対音感がない。
だから最初に歌声を録音して、それからどの音階のどの音が当てはまるのか一音ずつ確かめていかなければならない。音を曲にし始めた当初はそれがとにかく難しく、何度も躓きそうになったものだ。今ではある程度要領を得たが、それでも他の人よりは断然遅いだろう。機材も全く整っていないから、ノイズを除去したり音質を良くしたりする整音も必須事項だし。
私がもっているのは音が降ってくるという才能だけ。これを天賦の才だというのなら、絶対音感を与えなかった神は、果たしてどういう感情でこれだけを与えたのだろうか。普段神の存在なんか信じていないのに、こういうときばかりはいるかも分からない神を恨みたくなる。我ながら責任転嫁もいいところだ。
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19時59分。
汗ばむ手をマウスに乗せ、そのときを待つ。
20時00分。
投稿の文字をクリックした。新曲が世に流れる。それを見届けると、私は素早くXを開き、新曲の宣伝をポストした。
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ステラ @77__stellar
【宣伝】
新曲『ドライアイスセンセーション』
大好きな人に振られた、いつかの貴方へ。
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そのとき、ある人と投稿するタイミングが被った。その差、わずか1秒。



