「ねぇ、昨日のトワライの新曲聴いた!?」
「聴いた聴いた!!今回もほんっと最高だったよね!」
「umiちゃんの天才的な作曲!」
「毎回泣かされちゃうよね」
翌日の朝。
いつものように教室の隅で読書をしていると、後ろの方から女の子たちのそんな声が聴こえてきて肩がビクッと跳ねる。
「落ちサビのハモリが特にやばくてさ!」
「わかる〜!sanaちゃんとumiちゃんのふたりのハモリえぐい…!」
「あ〜ふたりの歌生で聴いてみたいな〜」
「声、あんなに素敵だもん。絶対素顔もかわいいよね!」
そんな会話に、冷や汗が出て止まらないでいると、
「おっはよ〜!」
という明るい声が教室に響くと、おしゃれな女の子たちのグループが一斉に彼女のところへ駆け寄る。
「朝菜!おはよう!」
「今日もお美しいですな」
「なんかみんな盛り上がってたね?」
「トワライの新曲!!朝菜聴いた?」
「あ〜トワライね〜!ほんとみんな好きだね。てか、私はそれどころじゃないの。昨日出た数学の課題まだできてなくて!集中するから話しかけないでね!」
と、さりげなく話題を変えた朝ちゃんは、自分の席に着いてすぐに課題に取り掛かりだした。
……朝ちゃん、トワライから話を逸らすためにわざと課題してないんじゃ……。
朝ちゃん、クラスの中でも成績上位だもん。
それとも、私との放課後の時間が増えたせいで、勉強に支障が!?
心配で、思わず朝ちゃんの席の方をゆっくり振り向けば、彼女がすぐこちらに気付いた。
そして……。
パチッとウインク。
──あっ、やっぱりわざとなのか。
周りは全然気付いていなくて、課題をやる朝ちゃんに話しかける。
「ねぇー朝菜〜!今話しかけちゃダメなら、放課後うちらとカラオケ行こー?」
カ、カ、カラオケ!?
そんなところ行っちゃったら、朝ちゃんの正体が……!
今日は特にハラハラすることが多いなぁ。
心の中でテンパっている私とは違って、冷静そうな朝ちゃん。
朝ちゃんは、持っていたペンを置いて、じっと友達を見つめた。
「カラオケ、嫌いだって言ったよね?次誘ったら……私のお弁当のブロッコリー全部、ルカの弁当に入れるよ!?」
「それだけはやめて!わかったから!」
「うん。よろしい」
グループの子達が「朝菜の歌聴いてみたかったのにな〜」と残念そうに肩を落としているけど、私はホッと胸を撫で下ろした。



