「あっ……」
「……」
翌朝。
学校に着いて靴箱で上履きに履き替えていると、視線の先に、見慣れた影が入った。
——朝ちゃんだ。
バチッと一瞬目が合った瞬間、昨日のことが、頭の中で蘇り、思わず、スッと視線を逸らしてしまった。
あぁ、どうしよう……。
ダメだ。謝らなきゃ……。
でも……。
「あーさな!おはよー!!」
もじもじぐるぐるしていたら、すぐに背後から明るい声がして、朝ちゃんの視線は私の背後に向いていた。
「ルカおはよう!あれ、なんか目の下、クマすごくない?」
「やばい、やっぱわかる?昨日、過去の恋リア見てたら止まらなくてさ〜」
「ルカ、恋リア好きだよね〜」
「朝菜は恋愛にキョーミなさすぎ!何に興味あんの!?まじで!」
「んー?秘密〜」
「出た〜朝菜の秘密主義!」
ふたりはそんな会話をしながら私より先に教室へ向かう。
はぁ……朝ちゃんは、昨日、私とあんなことがあっても、いつも通り笑えるんだな。
私は、今日朝ごはんが全然喉に通らなかったし、ママにも『嫌な夢でも見た?』ってすぐ聞かれるぐらい顔に出ていたのに。
本当、嫌な夢だったらいいのに。
いや、今まで、あの人気者の朝ちゃんと放課後の楽しい日々を過ごしていたことが夢だったのかも。
そう。
これが現実で、私にはこれがお似合い。
『立花さんはどっちがいい?』
『えっ、えっと……私は……』
『もう。立花さんってお話しするの遅いよね』
───ズキン
『なぁ、立花!お前、橋の下でひとりギター弾きながら歌ってたんだって!?』
『大人しそうに見えて結構やるな!』
『すごいよね〜私なら恥ずかしくてムリ』
───ズキン、ズキン
小学生の頃の嫌な記憶。
朝ちゃんと過ごすようになってから、全然思い出すことなんてなかったのに。
痛む心臓を抑えながら、重い足を引きずるかのように教室へと向かった。
大丈夫。
今日は金曜。
今日を耐えれば、明日は休みだ。



