「それって、私たちが顔出しせずトワイライトとして活動しても売れないってことですか?」
心で思っていたことが、朝ちゃんの声でそのまま突きつけられる。
放送室の空気が、一瞬で張り詰めた。
「朝ちゃん……」
私は思わず小さく名前を呼ぶ。
でも朝ちゃんは、画面から目を逸らさない。
『今のおふたりの活動スタイルを否定するつもりはありません。むしろ匿名だからこその魅力もありますし。ただ、私としては、sanaさんにもumiさんにも“トワイライト”だけじゃなく、おふたり個人の将来性もかなり感じている、ということはお伝えしておきたくて』
今まで柔らかかった空気が変わる。
「ちょっと待ってください」
朝ちゃんは止まらない。
「私たち、“トワイライト”として見つけてもらったんですよね?」
『もちろんです。なので、ただ、可能性の話として――』
「だから、その可能性はないって言ってますよね?私たちはふたりで……顔を出さずにっ」
その声は、怒りを含んで少し震えている。
初めて見る朝ちゃんの姿に、私も何故だか目の奥が熱くなる。
『sanaさん、誤解させてしまったなら申し訳ありません。ただ、私はおふたりの将来を考えて――』
「自分たちの将来は、自分たちで考えますので!!失礼します」
「えっ……朝ちゃ……」
ぴしゃりと言い切った朝ちゃんが、通話終了のボタンを勢いよくタップし、ぶつっ、と通話が切れた。
シーンとした放送室で、私たちは、真っ暗になったスマホ画面を見つめたまま。
「……よる」
朝ちゃんが、小さな声で私を呼ぶ。
その顔は、怒っているというより――泣きそうだった。
「ごめん。勝手に切っちゃった」
「ううん」
私は何も言えなかった。
だって。
柊さん、朝ちゃんの可能性の話はしたけれど、私のことには何も触れなかった。
それはきっと、悪意なんかじゃない。
これが現実。これがプロの世界。
だからこそ苦しかった。
朝ちゃんは、もっと大きな場所に行けるのかもしれない。
キラキラしたステージで、たくさんの人に見つけてもらえるのかもしれない。
なのに。
私がいるせいで。
朝ちゃんが“トワイライト”を私のために守ってくれようとしているせいで。
その可能性を、閉じ込めているのかもしれない。
柊さんには、それが見透かされてると感じた。
“あなたがsanaの足を引っ張っている”
そんなふうに言われている気がした。



