『参考までにお聞きしたいんですが、おふたりは今後顔出しで活動する予定はないですか?』
「「え?」」
『あ、いえ、あくまで可能性の話です』
柊さんは、こちらを驚かせないようにするみたいに、柔らかく笑った。
『最近は匿名アーティストも多いですし、顔出しをしない活動スタイルも普通です。ただ、その上で……今まで顔出ししてなかったアーティストがデビューきっかけに素顔を公開!っていうのも、話題性が十分にありますし、たくさんの人に注目してもらえるかと』
顔出し……そうなってしまったら途端に怖くなってしまう。いくら朝ちゃんが隣にいても……いや、朝ちゃんが隣にいるからこそ、華のある彼女と比べられてしまう。
なんて。
こんな考え方、いけないのにっ。
いつまでも弱い自分が嫌になって、ぎゅっと手に力を入れていると。
「あの、私たちとしましては、今後も顔出しはしない方向で活動したいと思っていて」
横にいた朝ちゃんが、通る声でしっかりとそう言った。
……朝ちゃん。
『なるほど』
柊さんは、否定するでも残念そうにするでもなく、静かに頷いた。
『ありがとうございます。大事なお話なので、きちんと考えを聞かせてもらえて嬉しいです』
その声色は、最初と変わらず穏やかでホッとする。
わかってくれる人でよかった……。
『おふたりとも未成年ですし、身バレや私生活への影響を不安に思うのは当然です。特に今の時代、慎重になるに越したことはありませんから』
「……はい」
朝ちゃんがしっかり頷く。
すると柊さんは、一瞬だけ考えるように目を伏せてから、言葉を続けた。
『ちなみに、sanaさん、今までに芸能事務所から声をかけられたことは?』
突然、話題が変わる。
柊さんの視線は朝ちゃんに集中している。
胸がワサワサ。嫌な予感がする。
“簡単には引いていない”
そんな空気が伝わった。
「……え?」
『何度か声かけられたことありますよね?』
戸惑う朝ちゃんに、柊さんが再度質問する。
「……ま、まぁ」
朝ちゃんが気まずそうに答えると、柊さんは『やっぱり……』と顎に指を添えて頷いて口を開いた。
『これは本当に個人的な感想なんですが……』
と柊さんが続ける。
『正直、sanaさんはビジュアル的にものすごく華があります。“トワイライト”としての活動とは別で、何かしら表に立つお仕事に興味はないのかな、と少し感じまして』
「表に立つ……?」
『モデルやアイドル、女優などです』
「じょ、女優!?」
黙って話を聞く朝ちゃんの隣で、思わず私が声を出してしまって慌てて口元を抑えた。
『もちろん、今すぐどうこうではありません。ただ、この業界にいると、その子がどこで売れるかがある程度わかるんです』
柊さんはそう言って柔らかく笑ったけど、目が笑っていないのが画面越しでも伝わる。
“その子がどこで売れるかがある程度わかる”
って。
それって……。



