約束の日の放課後。
普段はリラックスする場所なのに、全然落ち着かない。
今日は、オンライン通話の日。
学校が終わってすぐ元放送室に向かい、朝ちゃんのスマホ画面を横にしてその瞬間を待つ。
私たちは、もう30分前から、ずっとスマホとにらめっこしている。
「……うぅ、やっぱり私は画面外で話聞こうかな」
「何言ってんの!」
「だって……やっぱり顔が映るのは怖いよ……朝ちゃんは可愛いから……」
と私がごにょごにょしていると、朝ちゃんがため息混じりに話す。
「あのね、向こうは“トワイライト”をスカウトしたんだよ?DMの文面読み返そうか?よるの書く歌詞も歌声も、すごい褒めてたじゃん」
「……うん。でも、やっぱりカメラオフにできないかな!?もし私たちの情報が広まったりしたら…」
「相手は大手音楽事務所の方だよ?プロ中のプロ。大丈夫!」
「でも……」
「あーもうっ!」
ぎゃあぎゃあ騒いでいるうちに、通知音が鳴った。
――LUXERA MUSIC ミーティングルームに参加しました
「「っ!!」」
二人同時に固まる。
「……出るよ」
朝ちゃんの声に、コクンと頷くことしかできない。
朝ちゃんが、通話ボタンを押した、次の瞬間。
『こんにちは。突然のご連絡にも関わらず、お時間いただきありがとうございます』
落ち着いた男性の声が、スマホから流れた。
画面に映っていたのは、二十代後半くらいのスーツ姿の男性だった。
背景には、ガラス張りの会議室。
「こんにちは!トワイライトのsanaです!」
「こ、こ、こんにちは……umiです」
『はは、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ』
優しそうに笑われて、少しだけ肩の力が抜ける。
『改めまして、LUXERA MUSICで新人発掘を担当しております、柊と申します』
「ひ、柊さん……」
『“トワイライト”さんの楽曲、楽しく拝見しています』
その言葉だけで、胸の奥が熱くなる。
『特に最新曲、とても良かったです。トワイライトさんの作詞作曲は……umiさんが担当ですよね。誰も置いていかない歌詞がリアルで、それこそおふたりの同世代に刺さるんだろうなと。おふたりは中学生……でしたよね?いやーその若さですごい。おふたりの表現力や歌唱力も、現時点で素晴らしいですが、こちらの方でボイストレーニングを重ねたらさらに成長するだろうと思っています』
「……!」
朝ちゃんが、隣で小さく私の服を引っ張る。
“ほらね”って顔だった。
ちゃんと私たちの活動を、見てくれているんだ。
しかも、ボイストレーニングなんて、独学でしか歌ってこなかった私にとってはすごくワクワクする響き。
すごい……本当にプロの仲間入りになってしまうのかも。



