私は、ごくりと唾を飲み込んで、続きを読み進めた。
その先には、私たちの曲、歌声についての感想が丁寧に綴られていた。
こんな遠いところまで、自分たちの声が届いているなんて信じられない。
『もしよろしければ、一度オンラインにてお話しできれば幸いです』
「……」
「……」
私と朝ちゃんは、同時に顔を見合わせた。
数秒の沈黙。そして……。
「オンライン!?」
声が綺麗に重なる。
朝ちゃんは興奮でスマホを抱きしめたまま、足をバタバタ高速足踏みをしている。
対する私は、心臓がうるさすぎて、それどころじゃない。
オンラインで話すって……こんなコミュ症なのに大丈夫?
画面越しにでも、芸能事務所の人と会話するなんて。
そんなの、もう。
動画投稿サイトの片隅で歌っていた“だけ”の私たちとは、別世界すぎる。
「……どうする?」
朝ちゃんが、少しだけ真面目な顔で聞いてくる。
「えっ」
「つい興奮しちゃったけど、よる、人と話すの苦手だっていつも言ってるし、顔出しはしないとしても事務所に所属するってなるともっと私たちの名前が知られることになる」
「朝ちゃん……」
朝ちゃんが、私を置いていかず私のペースでそう話してくれることが本当にありがたくて救われる。
でも同時に、朝ちゃんにこうやって気遣ってもらって、それに甘えてばかりの自分を改めて実感した。
《LUXERA MUSIC》
有名アーティストの名前が並ぶ、大手レーベル。
こんなチャンス、二度とないだろう。
ひとりなら、怖くて全てから逃げていた。
でも、今は、朝ちゃんが隣にいる。
「……一度、話聞いてみる」
震える声で、私は言った。
その瞬間、朝ちゃんの顔が、ぱあっと輝く。
「ふふっ。決まり!じゃあ、返事送るね!!」
そう言った朝ちゃんは、ネットで『ビジネスメール 例文』なんて調べながら、せっせとメッセージを打ち込んでくれた。
出来上がった文をふたりで何度も読み返してから、私たちは一緒に「送信!!」と声に出して返事を送った。



