洗顔が終わりすっかり目を覚ました八重は、ドレッサーの椅子に腰を下ろす。
適当に化粧水を振りかけ、引き出しから多くのメイク道具を引っ張り出した。
「最悪。このカラコンもう空なんだけど」
ようやく口を開いた八重は、不機嫌さを隠すことなく文句を垂れる。
どうやら愛用のカラーコンタクトを使い切ってしまったようだ。
「あり得ないわ」
仕方なく他のカラコンを黒目に装着させた八重は、悪態をつきながら手慣れた様子で顔にメイクを施していく。
下地から濃いファンデーションに始まり、ばさばさの付け睫毛に太いアイライン。派手色のアイシャドウ。
厚いチークやベタついたグロス。
顔が完成したあとは、料理で言うところの隠し味と言わんばかりに、お気に入りの香水を首元や手首に何度もプッシュした。
「完璧っ」
そう言って鏡の中で微笑む彼女の顔は、あまりにも酷いものだ。
厚く塗られた顔は、本来の彼女の素材を残念なまでにすべて打ち消している。
長い髪をヘアアイロンで器用に巻き、掛けてあったブレザーに手を伸ばす。
派手に着こなした制服、短いスカート。
世間でいうところのギャルに変貌した八重。
厚化粧の八重は、これが可愛いと思っているらしい。
もう一度、姿鏡で顔や服装を確認し、八重は部屋を出ていった。
――これが堂島 八重。
明日で十七歳を迎える少女の一日の始まりであった。



