頭をこれでもかと下げた私に、おじいちゃんからはさらに驚いたような息遣いが聞こえてきた。
そりゃそうでしょうね。
今までの私は礼儀や作法とはかけ離れた態度でしたもの。
「……」
数秒後、ゆっくり顔を上げると、穏和な顔のおじいちゃんの表情が少しだけ真剣味を帯びていた。
「八重、一体どうしたんだい?」
一体どうした、とは。
私の態度のことを言っている?
それとも厚化粧をスッキリ落として部屋から出たこと?
おじいちゃんのことだから、すべてをひっくるめて訊いているに違いない。
「……」
何を言うかをはっきり心に決めながら、私は静かに口を開く。
「今まで、本当にごめんなさい」
また、深く頭を下げる。
そして唇が紡いだのは、謝罪の言葉だった。
本来の私の記憶や意識が蘇ってからというもの、ここに来るまでずっと胸の辺りがざわざわと落ち着かなかった。
理由は分かっていた。
私は、これまでしてきた振る舞いに対する謝罪を誰でもいいから伝えたかったのだ。
謝る相手はたくさんいるだろうけど、まずは目の前に居る人、おじいちゃんに。
私のしてきたことは、本当に最低だったから。
……中傷、虐め、嫌がらせ。
自分には極道の祖父がいるからと偉ぶって、人を下に見ることで優越感に浸っていたんだ。
自分を引っ叩きたいところだけれど、それでは何の解決にもならない。
だから、今できること、謝ることしか思い浮かばなかった。
「八重、顔を上げなさい」
「……!」
いまだ顔を上げない私に、おじいちゃんは優しくも芯のある力強い声でそう言った。



