「……おや、八重?」
居間に到着すると、部屋の中央にいた祖父と目が合った。
祖父……つまり私のおじいちゃん。
おじいちゃんは朝の日課である白湯を飲んでいたようで、テーブルに置かれた湯呑みからは、淹れたばかりなのか湯気が上がっている。
「……お、おじいちゃん」
「八重なのかい?」
おじいちゃんは私の顔を見ると目を点にさせていた。かなり驚いた表情をしている。
……顔? なんで顔……あ、顔!?
ハッとする。そういえば今の私はメイクを落として何もしていない状態だった。
長い間、私は家の人の誰にも素顔を見せていなかったことを思い出す。
部屋を出るときはすでに厚化粧で顔を覆っていたし、お風呂も遅くに入って、家族にすら素顔を見せていなかった。
なぜか私が見せたくなかったから。なんで見せたくなかったのかは、分からない。記憶が混濁しているのか、前世の意識が蘇る前の私の記憶にはところどころ抜けがある気がする。
だからおじいちゃんも素顔の私を見るのは本当に久し振り。
立ち尽くしているわけにもいかず、私は挨拶をしながら近くに並べられた座布団に座る。
小さく正座をした私は、畳に量手を置いて、頭深々とを下げる。
「おはようございます、おじいちゃん」
結構、緊張するな……。
今まで私は挨拶すらきちんとできていなかったし。
スマホはいじりっぱなして、ほかの家族とも顔を合わせていなかった。



