私は新聞を読む性格じゃなかったけど、この家の居間の棚に、一週間単位で新聞紙の束がまとめられてあったはず。
情報収集にそれを見てみるのもアリかも。
髪を切るのにも敷物として必要だし、取りに行かないとね。
それにこの時間ならほかの家族の人たちが起きている頃だ。
……家族、とは。
極道、すなわち堂島組に入ったら祖父であるおじいちゃんは「親」に。入った者は「息子」になる。
子分と同じものなんだけど、おじいちゃんは息子と呼んでいた。
だから私にとっても堂島組の皆さんは「家族」なのだ。
思えば、昨日までの私はこの大所帯が不愉快だったみたいだけど、今の私は逆に嬉しかった。
家族と呼べる人たちが周りにいる感覚は孤児院と似たものがあるけど。なんだかもっともっと、近くに感じられるから。
それはきっと、妹がいて、おじいちゃんがいて、血の繋がりがはっきり分かっているからだ。
それは前世の私が手に入らなかった繋がり。
「………さーて、居間に行こっと」
静まり返った廊下を歩きながら、私は思わず笑みを浮かべる。
それにしても立派な建物だな。
息を吸い込めば、優しい木の香りを感じられる空間。
もう何年も住んでいるのに、蘇った私の意識で、感動に浸っていた。
家の庭も、かなりの坪があるらしい。
鯉が自由に泳ぐ池や、手入れが行き届いた園芸。
業者さんではなく、これも全て家族の皆が趣味の領域でやっているのだからたまげた。
どっからどう見てもプロの仕上がりじゃない?
「あ、いい匂い……」
居間に近づくにつれて、味噌汁の良い匂いが廊下に漂ってきた。



