ほら、よく見たら毛先から胸上ぐらいまで髪が死んでいる。パサパサ通り越してパキパキしてる。
これはもう切るしかないよね。
うん、切るしかない。
時刻はまだ朝6時手前。7時半までに学校に行く支度をすれば余裕だろう。
これは、もう……やるしかない!
「確かハサミはドレッサーの右の引き出しの………あった」
思い立ったらなんとやら。私は散髪用のハサミを引っ張り出した。
これから心機一転という意味も兼ねてバッサリいこうと思ったのだ。
「心機一転、心機一……ああああ!?」
私は唐突に声をあげる。
本当に急に思い出してしまったのだ。昨日自分の身に起こった散々な一日を。
取り巻きに提案されて、合コンに行ったらなんとその男たちは暴走族チーム『風丸』に所属する人たちで。
暴れたら逆鱗に触れて長椅子に押し倒されて、それで……。
「うわわわ! 何これ鳥肌っ!」
そうだ、店員さんが部屋に入って来なかったら私は……完全に襲われていた。
思い返して、背筋がひやりと凍る。
「うっわぁ……しかもあの取り巻き二人も最初から仕組んでたってことでしょ? 信じられない」
しかも運良く逃げ出せたと思ったら、帰る途中で妹の愛梨に数々の暴言を吐いてしまったし。……え、本当にどうしよう。
いろいろ問題が多すぎて頭がぐちゃぐちゃだわ。
本当に何やらかしてくれたんだ私。
もはやため息しか出てこない。
とりあえず今は髪を切ることに専念しよう。
前世の私は孤児院の子どもたちの髪を整えたりしていたし、手慣れてると思うからオ大事故を起こすことはないと、思う。
「散らかさないように新聞紙を敷かないとね。えっと新聞紙はどこに……」
どこにもなさそうだ。そもそも新聞なんて個人的に読んだりしなかったっぽいしね。前世の私は孤児院の入り口の棚にあったからたまに暇つぶしで眺めていたりしたけど。
というか前世の私が死んで、すぐに転生をしてもらったから、たぶん単純に考えて前世から十七年が経過してるってことだよね?
昨日までの私の記憶があるといっても、調べたりとか世間に関心を向けるような性格ではなかったので、かなり知識に偏りがあるみたい。



