──そこは白い空間だった。
いつの間にか見覚えのない場所倒れていた私は、朦朧とした頭で起き上がる。
そして、一番初めに目についたのは。
「すみませんでした。」
土下座をした男の人の姿だった。
聞けばその人は、いわゆる「神」と呼ばれる存在の人だった。
……だった。
すべてが過去形なのは、私が起き上がり神の土下座を見た出来事が三十分ほど前の記憶になりつつあるからだ。
そう、私がこの空間で目を覚ましてから、まもなく三十分が経過する。
「……ずびーっ」
「落ち着いてくれた?」
私は今の今まで号泣していた。
絶賛鼻垂れ系女子でした。
なぜって? そんなの決まってるだろうよ!
いきなり見知らぬ空間で目が覚めて目の前には土下座している男がいて「ここはどこですか」と尋ねたら「あなたは死んだんです」って返答されたんだからね。
答えになってないしアンビリバボーすぎるよね!!
最初はテレビか何かのドッキリ企画だと思っていたけれど。
実態の掴めないどこまでも続いていそうな真っ白い空間や、目の前の自称神を見てしまったら信じざるを得なくなってしまったのだ。
だってこの神……浮いてるんだもんっ!!
そう浮いてるんだよ重力なんて概念を無視してプカプカと浮きやがってるちくしょう!!
夢の道具タケコ○ターが頭にあるわけでもなけりゃ、上から吊ってるわけでもない。完全に浮いている。
そう、だから──ああ、私は死んだんだ。頭がそうだと受け入れ始めた瞬間、いろんな感情が一気に込み上げてきて涙が溢れた。
「……っ」
十八歳で人生が終了した自分。
親より先に死んだことが申し訳なくて悲しかった、というわけじゃない。
そもそも私には両親も親戚もいなかったから、むしろそのあたりは何とも思えなかった。
それでも涙が止まらないのは、たぶん、悔しかったんだと思う。
こんなにあっさり死んでしまったことを、惨めに感じてしまったんだ。
……今思うと、喧嘩三昧だったなぁ。
頼れる身内がいなかった私は、孤児院で幼少期の頃から過ごしていたのだけれど。
孤児院出身だからとか、くだらない理由に漬け込んで嫌がらせをしようとする人たちが結構いた。
国からの補助金があるんだろうとか言って、お金を盗ろうとする馬鹿どもが信じられないけどいたのである。
そんな奴らを普段から相手にしていた私は、いつの間にか喧嘩に自信がついていて。
結果、死ぬまで喧嘩三昧の人生だった。
孤児院の院長さんに、きちんとした恩返しもしていなかった。
それが悔しい。
……"あの子達"とも、もっと一緒にいてあげたかった。
悔しくて、虚しくなって。それが涙となってこぼれ落ちる。
神の着ていたシルクっぽい布の服を、ビショビショにするぐらい泣いた。ついでに鼻もかんでやった。



