「あ、あの……お姉ちゃん。そういえば何か欲しい物とかない? 明日はお姉ちゃんの誕生日だから…」
話を切り替えるように愛梨は八重に尋ねる。
屈託のない花が笑うような笑みだ。
「……」
その笑顔が、八重を苛つかせる。
どうしてこの子は、こんなに楽しそうにしていられるんだと。
「――んなのよ」
「え?」
「どうせ大した物なんて用意できないでしょ? あんた、罪の皆が目の前にいるからってなに猫被ってんのよ?」
「えっ? あの…わたし、そんなつもりは」
八重はいつも愛梨に酷い言葉を投げていた。
罪の幹部たちは八重のそんな身勝手な態度を知っているからか、良い顔をしていない。
「はぁ? 愛梨が猫被ってるとか、なに馬鹿なことを言ってんだよあんた」
八重の言葉がかなり気に障ったのか、兎香は新しく取り出したスティックキャンディも噛み砕いて八重を睨みつけた。
「まあまあ、兎香……ここは穏便に、ねぇ?」
兎香に声をかけ、肩に手を置いた巳鶴。
彼も口は笑っているが、目は据わっているとしか言いようがない表情をしていた。
「ねぇ八重ちゃん。本当に君は相変わらずだ」
巳鶴はもう一度八重を見ると、笑顔を向けて口を開く。
その笑顔は温度が下がった様に、冷たい威圧感を放っている。
「だからこんな奴に会いたくねぇんだよ。気分わりぃ、俺先に行ってるわ」
透馬は後頭部を掻いて八重に睨みを効かせると、先に校内のほうへ歩いて行ってしまう。
「さぁて、俺たちも行こうかね」
「ほら愛梨、行くよっ」
「あっ、待って……!」
愛梨は巳鶴と兎香に連れられるようにして八重から離れて行った。
八重はそんな三人の後ろ姿を視界に入れると、手のひらに爪の跡がつくくらい、強く拳を作る。
「…………」
納得のいかない感情に包まれながら、八重はただ心の中でつぶやいた。
……どうして、愛梨ばっかり。



