余所者-よそもの-

受付に戻ると、椅子に座ってスマホを触るユキの隣に掛けた。


「傷、残るんだってね」

スマホに目を落としたまま言ったユキに、やっぱりそっちからも声は筒抜けなんだなって笑ってしまう。


私は処置をしたばかりのおでこの上にそっと触れてから、前髪をちょんちょんと整えた。


「隠れるところでよかったです」


そう返した私に、ユキがスマホから顔を上げた。
その顔は「はぁ?」ってな具合に怪訝そう。


私にはそんな顔をされる意味がわからないから、鏡みたいになって同じ表情をお返しした。


「瑞生さん」、と呼ばれた名前に精算を済ませ、病院を出る。

車に乗り込む前に「ユキさん」と呼び止めた。


「ありがとうございます」

きっと高くついたと思う。
保険証も持ってないし、多めに縫ってもらっちゃったようだし。


「すぐにどこかで働きます」

今は無一文だけど、早く働いてお金を返そう。


ユキは「まぁ」と相槌を置いて「そのつもりだよ」と車のロックを解除した。

その言い草に、もしかして、と思う。


「働き口を紹介してもらえるんですか?」

「………」

潤から、ユキの無言はおよそ肯定だと聞いた。


私は少し考える。
ユキが私に紹介する職場、働き口。

何もない私が働ける場所。
ドラマとか漫画とかで見たことのある流れだ。


「……ふ、風俗とかですか」

するとユキはこちらを一瞥して、ふっと鼻で笑った。


「あんな身体が売り物になると思ってるのか」


あんな、という言葉に一瞬止まる。
昨日お風呂場で晒してしまった、痣だらけの身体のことだ。


「バカだな」

そう言って車に乗り込んだ。