余所者-よそもの-

マシンガンのように話を止めない女性に「あのさ」、と適当なところで区切りをつけたユキは続けて言った。


「今診察室に女が入ってるんだけど。針多めに縫ってほしい」

「まぁ!わかったわ、先生に言っておくわね」


女性の足音がこちらに近づき、「先生~」なんて診察室の外から声をかける。

ちらりと目の前の医者を見ると少しム、とした表情をしていて。
多分そんなの、

「聞こえてるよぉ」


ですよね。
50代半ば程の先生はチ、と舌打ちをする。

苛立つ理由は、針を多く縫うと仕事が増えるからかなって思ったけど違うらしい。


「言われなくてもわかっとる。……ったぁく、女の子の顔にこんな傷をつけて」

そして「どうしようもない街だよ、ホント」と吐き捨てた。

この怪我の理由をこの人に話した覚えはないのだけれど、” 誰かにやられた傷 “として診られているようだ。


「はい、おわり」

ほどなくして処置が終わった。
医者はいくつかの注意事項を告げる。

抜糸までは運動を控えること、湯舟に浸からないこと、処方する薬の飲み方。
一通り説明を終えると「お大事に」と締めくくったので、席を立った。

診察室を出ようとしたその時。

「できる限り細かく縫ったけど、傷は残ると思うよ」

カルテにペンを走らせながら、医者は付け足すようにそう言った。
私はペコリと頭を下げて、診察室を後にした。