***
数学のプリントに赤ペンで大きな丸を付けた瞬間、
有栖は机に突っ伏した。
「おわっっったぁ……」
魂が抜けきった声だった。
隣で英語のノートを閉じた零が、小さく笑う。
「お疲れさま」
「絶対今日寿命縮んだ……」
「大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃないもん……二次関数が私を殺しに来てた……」
有栖は半泣きで唸る。
途中で三回逃亡しようとしたのを、零に捕獲されていた。
窓の外を見ると、もう真っ暗だった。
夕方だった空はすっかり夜に変わっていて、
住宅街の明かりがぽつぽつと灯っている。
「うわ、もうこんな時間?」
「結構やってたからね」
「えぇ……」
時計は九時を回っていた。
その時、こんこん、と軽いノックが響いた。
「はーい」
有栖が気の抜けた返事をすると、ドアが開く。
「二人とも、ご飯できたよー」
顔を覗かせたのは有栖の母だった。
有栖によく似た、朗らかな雰囲気の女性。
「あ、そうだ。零くん、今日は泊まってくの?」
あまりにも自然な問いかけだった。
零も同じくらい自然に答える。
「まだ決めてないです」
「泊まってきなさいよ〜。もう遅いし」
「そうだよ零、泊まってけば?」
有栖も当然みたいに言う。
家が近いとはいえ、もう夜だ。
それに、零が泊まること自体は昔から珍しくもなんともない。
数学のプリントに赤ペンで大きな丸を付けた瞬間、
有栖は机に突っ伏した。
「おわっっったぁ……」
魂が抜けきった声だった。
隣で英語のノートを閉じた零が、小さく笑う。
「お疲れさま」
「絶対今日寿命縮んだ……」
「大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃないもん……二次関数が私を殺しに来てた……」
有栖は半泣きで唸る。
途中で三回逃亡しようとしたのを、零に捕獲されていた。
窓の外を見ると、もう真っ暗だった。
夕方だった空はすっかり夜に変わっていて、
住宅街の明かりがぽつぽつと灯っている。
「うわ、もうこんな時間?」
「結構やってたからね」
「えぇ……」
時計は九時を回っていた。
その時、こんこん、と軽いノックが響いた。
「はーい」
有栖が気の抜けた返事をすると、ドアが開く。
「二人とも、ご飯できたよー」
顔を覗かせたのは有栖の母だった。
有栖によく似た、朗らかな雰囲気の女性。
「あ、そうだ。零くん、今日は泊まってくの?」
あまりにも自然な問いかけだった。
零も同じくらい自然に答える。
「まだ決めてないです」
「泊まってきなさいよ〜。もう遅いし」
「そうだよ零、泊まってけば?」
有栖も当然みたいに言う。
家が近いとはいえ、もう夜だ。
それに、零が泊まること自体は昔から珍しくもなんともない。



