君と歌姫はじめました!

零はいつもそうだ。

無理に夢を見せない。

絶対売れる、とか。

才能がある、とか。

そういう綺麗な言葉で押し切らない。

ただ、駄目だった時も一緒に笑ってくれる。

だから怖くなくなる。

「あーもう……」

有栖はひとしきり笑ったあと、目尻に滲んだ涙を指で拭った。

それから大きく息を吐いて、

覚悟を決めるみたいに零を見る。

「……じゃあ、やる」

零が瞬きをした。

「動画、出してみる」

「ほんと?」

「うん」

有栖は少し照れくさそうに笑った。

「どうせ零、言い出したら何が何でもやるでしょ」

「まあ、それは」

「否定してよ!」

二人で笑う。

夕暮れの光が、部屋をオレンジ色に染めていた。

「でも条件ある」

「条件?」

「絶対、一人にしないで」

有栖は真っ直ぐ零を見る。

少しだけ不安そうな目だった。

「私、機械とかほんと無理だし、緊張しいだし、

すぐ逃げたくなると思うから」

「うん」

「だから、ちゃんと隣いて」

一瞬。

零の表情が、少しだけ柔らかく崩れた。

嬉しそうに。

「もちろん」

その返事に、有栖はへへっと笑う。

「じゃあ決まり!」

勢いよく立ち上がった拍子に、

強い風が吹き込んで課題プリントが盛大に散らばった。

「あ」

「……まず宿題やろうか」

「今めちゃくちゃやる気出てたのに!?」