君と歌姫はじめました!

「有栖が歌ってくれないと意味ない」

「……え?」

「僕一人で曲作っても、完成しないから」

有栖は瞬きをした。

零は基本、なんでも出来る。

だから時々忘れそうになるのだ。

目の前の人もちゃんと、誰かを必要としていることを。

「有栖の声が入ると、ちゃんと『曲』になる」

静かな声だった。

大げさでもなく、慰めでもなく。

本当にそう思っている声。

「……それ、零だからそう思うんじゃないの」

「ううん」

零は首を横に振る。

「多分、誰が聞いてもそう思うよ」

その言葉に、有栖は少しだけ黙り込んだ。

褒められるのは苦手だ。

特に零は、絶対に嘘をつかない。

だからこそ照れる。

「……でも、誰も見なかったらどうするの」

ぽつりと零れた声。

さっきまでの騒がしさより、ずっと小さい。

「動画出して、全然伸びなくて……恥ずかしい感じになったら」

有栖は、自分の『好き』を笑われるのが怖かった。