君と歌姫はじめました!

「ていうか、私機械とか全然わかんないし……

動画とかどうやって出すの? ボタン押したら爆発とかない?」

「そんなボタンないよ.....」

「ほんとに?」

「まぁ.....多分?」

「今『多分』って言った!」

ぎゃあぎゃあ騒ぐ有栖を見ながら、零は柔らかく目を細める。

こういうところ、本当に変わらない。

昔から有栖は、自分のことになると途端に自信がなくなる。

誰かのためなら迷わず飛び込むくせに、

自分自身の価値だけは、驚くほど疑っている。

「別に、顔出しとかしなくていいし」

「え?」

「歌だけでもいい。ほら、最近そういう人多いじゃん」

零はスマホを取り出して、適当に動画サイトを開いて見せる。

イラストだけの動画。

歌声だけの投稿。

顔を隠して活動している配信者。

「こういう感じ」

「へぇ……」

有栖は恐る恐る画面を覗き込んだ。

「……でも、この人たち上手いじゃん」

「有栖も上手いよ」

「零が幼馴染贔屓してるだけでしょ」

「それは絶対無い。」

きっぱり言われて、有栖は言葉に詰まる。

零は滅多に物事を断言しない。

でもその分、一度言い切ったことは絶対に曲げないのだ。

「……有栖の歌、ちゃんと届くと思う」

静かな声だった。

押し付けるでもなく、夢を語るでもなく。

ただ、『事実』を話すみたいに。

「僕、有栖の声、すごく好きだよ」

その一言に、有栖の肩がぴたりと止まった。

「……っ」

不意打ちみたいに言うからずるい。

しかも零は、言った本人が一番無自覚なのだ。

「いや、だからそういう……なんか……」

有栖は耳を赤くしながら視線を逸らした。

「急に真面目な感じで言われると困るんだけど……」

「え、感じっていうか.....真面目だよ?」

「や……でも私、零みたいに楽器弾けないし……」

有栖はクッションに顔を半分埋めながら、もごもごと呟いた。

「ピアノもギターも無理だもん。

っていうかリコーダーすら怪しかったし……」

「リコーダーはひどかったね」

「えっそこ否定しないの!?」

「音楽室の窓割れそうだったよね」

「割れてないもん!」

むっとした顔でクッションを投げる。

零は危なげなく片手で受け止めて、小さく笑った。