君と歌姫はじめました!

その横で、零はノートパソコンを操作して検索画面を開いた。

カタカタ、と軽い入力音。

「コンデンサーマイク 値段」

迷いのない手つきだった。

画面が切り替わると、ずらりと価格帯が並ぶ。

その光が、零の顔を淡く照らす。

センター分けの黒髪の間から覗く瞳が、左右で色を違えていた。

フランス人の祖母の血を引いているせいか、

零は日本人では珍しいオッドアイだ。

右目は、光を吸い込むような灰色。

左目は、熱を持ったような赤。

どちらも静かで、どちらも感情が読みにくいのに、

不思議と視線を奪う。

有栖はその横顔を、ぼんやりと見ていた。

「……零ってさ」

「ん?」

画面から目を離さずに返事が来る。

「その目、やっぱり目立つよね」

一瞬、空気がゆるく止まる。

零は少しだけ手を止めてから、ゆっくり有栖を見る。

「そうかな」

「うん」

有栖は悪気なく言う。

「まぁ、初対面だと、びっくりはされるね」

「やっぱ?」

零は小さく息を吐いて、また画面に視線を戻した。

「だから、これも一応、顔出ししない理由の一つ」

「あー……」

 有栖は納得したように頷く。

「でも」

「うん?」

「私は好きだよ。宝石みたいで。」

さらっと言う。

零は一瞬だけ瞬きをしたあと、少しだけ口元を緩めた。

「それはありがたいね」

画面の光が、左右で色の違う瞳に反射する。

赤と灰。

相反するのに、妙に自然に同じ顔に収まっている。

そんな零の横顔が、有栖は好きだった。

零が再び指を動かし必要な機材を一つずつ整理していく。