***
それから数十分後。
「「ご馳走様でした」」
またぴたりと重なった声に、
有栖の母が「二人とも、ほんと仲良いわねぇ」と笑った。
食器を軽く片付けてから、二人はそのまま二階へ戻る。
有栖の部屋に入ると、ふわりと柔軟剤の匂いがした。
床に敷かれた丸いラグの上へ、二人してどさりと座り込む。
有栖はいつものように豪快なあぐら。
零は少し崩した正座だ。
その向かいに小さなミニテーブルを引き寄せて、
ノートやシャーペンを広げる。
「まず何決める?」
零が問いかける。
「んー……名前とか?」
「ああ、ユニット名」
「それそれ!めっちゃぽい……!」
有栖はちょっと楽しそうに目を輝かせた。
その時だった。
「あ」
何かを思い出したみたいに、有栖がぽんと手を打つ。
「どうしたの?」
「確かこの辺に……」
ごそごそ、とクローゼットを漁り始める。
服の山を掻き分け、収納ケースを引っ張り出し、しばらくして。
「あったー!!」
ずるずると引っ張り出されたのは、一台のノートパソコンだった。
薄型で、シンプルな黒いモデル。
しかも結構いいやつだ。
零が少し目を丸くする。
「……それ、かなりスペック高いやつじゃない?」
「らしいね」
「らしいって」
「昔お母さんたちが誕生日に買ってくれたの」
有栖はパソコンを抱えながらラグへ戻ってくる。
「『最近の子はみんな持ってるでしょ』って」
「いいご両親だなぁ」
「ね。でも」
有栖は遠い目をした。
「私、自分が壊滅的機械音痴だって知らなくて」
「あぁ……」
「三日でクローゼット行き」
「早」
「だって何押したらいいか分かんないんだもん!」
有栖はむすっとしながらパソコンをテーブルに置く。
「しかもなんか一回、画面真っ青になって泣いた」
「ブルースクリーン?」
「知らない。でもマジで終わったと思った」
零は耐えきれず吹き出した。
「有栖、それでよくこの現代社会生きてこれたね」
「失礼じゃない!?」
言いながら、有栖は恐る恐るパソコンを開く。
すると。
「……うわ」
零が小さく声を漏らした。
ほぼ新品だったのだ。
キーボードも綺麗で、使用感がほとんどない。
「ほんとに使ってなかったんだね.......」
「うん」
「宝の持ち腐れだ」
「ぐぅの音も出ない……」
有栖は肩を落とす。
そんな彼女を見ながら、零はふっと柔らかく笑った。
「でもちょうどいいね」
「え?」
「これ、動画編集にも使えるじゃん。
予算はできるだけ削りたかったから、ありがたい。」
その言葉に、有栖はぱちりと瞬きをした。
さっきまでただの『置物』だったパソコンが、
一気に意味を持った気がした。
零はパソコンの電源が入るのを確認すると、
迷いなくタッチパッドに指を滑らせた。
カタカタ、と軽い操作音。
「……あ、これなら普通に使えるじゃん」
「うっそお!」
有栖が半目になるのをよそに、
零は手慣れた様子でワープロアプリを開いた。
白い画面が立ち上がる。
カーソルが点滅する。
その一番上に、まず一行。
『ユニット名:』
まだ空白のまま。
点滅するカーソルだけが、
打ち込む準備を万端にして待ち構えている。
それから数十分後。
「「ご馳走様でした」」
またぴたりと重なった声に、
有栖の母が「二人とも、ほんと仲良いわねぇ」と笑った。
食器を軽く片付けてから、二人はそのまま二階へ戻る。
有栖の部屋に入ると、ふわりと柔軟剤の匂いがした。
床に敷かれた丸いラグの上へ、二人してどさりと座り込む。
有栖はいつものように豪快なあぐら。
零は少し崩した正座だ。
その向かいに小さなミニテーブルを引き寄せて、
ノートやシャーペンを広げる。
「まず何決める?」
零が問いかける。
「んー……名前とか?」
「ああ、ユニット名」
「それそれ!めっちゃぽい……!」
有栖はちょっと楽しそうに目を輝かせた。
その時だった。
「あ」
何かを思い出したみたいに、有栖がぽんと手を打つ。
「どうしたの?」
「確かこの辺に……」
ごそごそ、とクローゼットを漁り始める。
服の山を掻き分け、収納ケースを引っ張り出し、しばらくして。
「あったー!!」
ずるずると引っ張り出されたのは、一台のノートパソコンだった。
薄型で、シンプルな黒いモデル。
しかも結構いいやつだ。
零が少し目を丸くする。
「……それ、かなりスペック高いやつじゃない?」
「らしいね」
「らしいって」
「昔お母さんたちが誕生日に買ってくれたの」
有栖はパソコンを抱えながらラグへ戻ってくる。
「『最近の子はみんな持ってるでしょ』って」
「いいご両親だなぁ」
「ね。でも」
有栖は遠い目をした。
「私、自分が壊滅的機械音痴だって知らなくて」
「あぁ……」
「三日でクローゼット行き」
「早」
「だって何押したらいいか分かんないんだもん!」
有栖はむすっとしながらパソコンをテーブルに置く。
「しかもなんか一回、画面真っ青になって泣いた」
「ブルースクリーン?」
「知らない。でもマジで終わったと思った」
零は耐えきれず吹き出した。
「有栖、それでよくこの現代社会生きてこれたね」
「失礼じゃない!?」
言いながら、有栖は恐る恐るパソコンを開く。
すると。
「……うわ」
零が小さく声を漏らした。
ほぼ新品だったのだ。
キーボードも綺麗で、使用感がほとんどない。
「ほんとに使ってなかったんだね.......」
「うん」
「宝の持ち腐れだ」
「ぐぅの音も出ない……」
有栖は肩を落とす。
そんな彼女を見ながら、零はふっと柔らかく笑った。
「でもちょうどいいね」
「え?」
「これ、動画編集にも使えるじゃん。
予算はできるだけ削りたかったから、ありがたい。」
その言葉に、有栖はぱちりと瞬きをした。
さっきまでただの『置物』だったパソコンが、
一気に意味を持った気がした。
零はパソコンの電源が入るのを確認すると、
迷いなくタッチパッドに指を滑らせた。
カタカタ、と軽い操作音。
「……あ、これなら普通に使えるじゃん」
「うっそお!」
有栖が半目になるのをよそに、
零は手慣れた様子でワープロアプリを開いた。
白い画面が立ち上がる。
カーソルが点滅する。
その一番上に、まず一行。
『ユニット名:』
まだ空白のまま。
点滅するカーソルだけが、
打ち込む準備を万端にして待ち構えている。



