【裏稼業バディ】天才ハッカーの地味女子と、狂犬ヤンキーの幼馴染が学園の闇を暴くそうです。

「……遅い」

薄暗い旧校舎のパソコンルーム。
モニターの青白い光だけが照らす部屋で、私はモニターから視線を外さずに呟いた。

近くに立てかけているスマホの画面が、ちらちらと光るたびに、焦る気持ちを抑えながら横目で通知の確認をする。
もう予定の時刻を過ぎているのに、何の連絡も来ていない。

バンッ!

無遠慮な音が響いて、扉が蹴り開けられる。

「わりぃ。ちょっと掃除に手間取った」

ところどころ薄っすらと血の滲んだ学ランの袖を捲り上げながら入ってきたのは、
泣く子も黙る学園のトップ不良。
——九条 大和(くじょうやまと)。

もちろん掃除というのはそのままの意味ではなく、
よく言えば社会への奉仕活動のようなもの、

「また正面突破? あんた、少しは頭使いなさいよ」
「うるせぇ。頭脳労働は天才ハッカーの雪笹栞(ゆきざさしおり)様のご担当だろ。」

悪びれる様子もなく、大和が隣の椅子にドカッと腰を下ろす。
ふと、捲り上げられた彼の腕に、古い大きな傷跡が見えた。

——中学の時、私を半グレ集団から助け出すためについた傷。

当時の私が、興味本位でハッキングをしたサイトが半グレが目を付けていたサイトで、
まだハッキングの能力が低かった私は、ログから足が付き、裏組織に監禁されてしまったのだ。

そんな誰もが(わたしすら)諦めるような状況の中、
大和はたった一人で乗り込んできて、自分の身を呈して私を救ってくれた最強の幼なじみだ。

そして私は、過剰防衛で捕まりそうになった大和を救うため、
組織の犯罪証拠を全てハッキングして世間にバラ撒いた。

そんな事件は、中学校という小さなコミュニティの中で瞬く間に広がり、
大和は一気に腫れもの扱いされ、孤立してしまった。

大和は勇気ある行動で私を助けてくれたヒーローのはずなのに、
彼の性格ゆえに、噂に尾ひれがついて凶暴性を増した噂が、いつの間にか真実としてさらに広まったせいだ。
私のせいで、大和には必要のない過剰な罪を背負わせてしまっている。

一見そうは見えなくても、人には弱い部分がある。
元々友人の少なかった私は、これ幸いと大和と過ごす時間を増やした。
ひとりぼっちでいていいわけが無い。私にできることは、ただ彼の心の隙間を埋めることだけだから。

そのお陰でトラブルに巻き込まれることも多かったけれど、
そのトラブルの分、私と大和の絆は深まっていった。

あの傷は、私たちがお互いの命綱になった日の証明。
頭脳(わたし)には、暴力(このひと)の庇護が必要で。
暴力(このひと)には、頭脳(わたし)の制御が必要になっていった。