「放課後、君の隣で」

繋がれた手が、熱い。

結衣は顔を上げられないまま、小さく息を飲んだ。

「……嫌?」

蓮が不安そうに聞く。

その声に、胸がぎゅっと締め付けられる。

「や、じゃない……」

消えそうな声だった。

すると蓮は少しだけ安心したように笑う。

「よかった」

そのまま、ふたりは手を繋いで歩いた。

駅までの道が、今日はあっという間に感じる。

でも結衣の頭の中は限界だった。

好きな人と手を繋いでる。

その事実だけで、心臓が壊れそうなくらいうるさい。

駅前に着くと、蓮は名残惜しそうにゆっくり手を離した。

指先が離れる瞬間、少し寂しいと思ってしまう。

「……じゃあまた明日」

「うん」

帰ろうとした時。

「春川」

呼び止められる。

振り向くと、蓮が真っ直ぐ結衣を見ていた。

いつもより真剣な目。

「俺、」

その瞬間。

——ブブッ。

結衣のスマホが鳴った。

「っ……」

タイミング悪すぎる。

画面には美桜からの大量メッセージ。

〈今日どうだった!?〉
〈絶対なんかあったでしょ!?〉
〈既読つけて!!〉

結衣が慌てていると、蓮が吹き出した。

「ははっ」

「も、もう……!」

恥ずかしくて顔を隠したくなる。

すると蓮は、優しく目を細めた。

「続きはまた今度言う」

「え……?」

意味深な言葉。

気になりすぎるのに、蓮はそれ以上教えてくれない。

「じゃあな、結衣」

その瞬間。

結衣の思考が止まる。

今、名前——。

蓮は自分で言ったあと少し照れたように目を逸らし、そのまま歩き出した。

残された結衣は、真っ赤なまま動けない。

胸が苦しい。

嬉しくて、苦しくて、どうしようもない。

夜空を見上げながら、結衣は小さく呟いた。

「……ずるいよ」

こんなの、もっと好きになるに決まってる。