「放課後、君の隣で」

掴まれた腕が熱い。

蓮の顔がすぐ近くにあって、結衣は息をするのも忘れそうになる。

「れ、蓮くん……」

名前を呼ぶ声が震える。

蓮ははっとしたように手を離した。

「……悪い」

少し気まずそうに視線を逸らす。

でも結衣の心臓は、まだうるさいままだった。

帰り道。

いつもより会話が少ない。

隣を歩いているだけなのに、お互い意識してしまって落ち着かなかった。

すると途中で、蓮がふいに立ち止まる。

「コンビニ寄るけど、来る?」

「う、うん」

店内は涼しくて、甘いお菓子の匂いがした。

結衣が飲み物コーナーを見ていると、蓮が隣から小さく笑う。

「またそれ?」

「え?」

「いちごミルク好きだよな」

覚えられてた。

それだけで胸が温かくなる。

「蓮くんは?」

「ブラック」

「苦そう……」

「子供舌には分かんねぇよ」

「子供じゃないし!」

思わず言い返すと、蓮は珍しく声を出して笑った。

その笑顔を見た瞬間。

結衣の胸がきゅっと締め付けられる。

——好き。

その言葉が頭をよぎって、慌てて目を逸らした。

会計を終えて店を出る。

外はもう暗くなり始めていた。

歩きながら、蓮がぽつりと呟く。

「春川といると楽」

結衣は目を瞬かせる。

「え……?」

「無理しなくていいから」

優しい声だった。

胸の奥がじんわり熱くなる。

すると突然、後ろから自転車が勢いよく通り過ぎた。

危ない——と思った瞬間。

ぐいっ。

蓮が結衣の腕を引き寄せる。

「危なっ……!」

気づけば、結衣は蓮の胸にぶつかっていた。

近い。

近すぎる。

心臓の音が聞こえそうだった。

「大丈夫?」

頭の上から落ちてくる声。

結衣は真っ赤になりながら小さく頷く。

すると蓮は、安心したように息を吐いたあと——

結衣の手を握ったまま固まった。

「あ……」

お互い同時に気づく。

でも蓮は、すぐには離さなかった。

指先が少し震えている。

「……このままじゃダメ?」

低い声。

結衣は何も言えなくなる。

離してほしくない。

そう思ってしまったから。

夜風が静かに吹き抜ける。

繋がった手は、想像以上に温かかった。